ダルビッシュ6年の契約延長の是非

MLB

スプリングトレーニング開始まであと2週間ほどというタイミングでパドレスにビッグニュースが飛び込んできました。
ダルビッシュとの契約延長です。
今回はこの契約延長についての私の所見と今後の展望を紹介していきたいと思います。

6年契約の意図

ダルビッシュの元々の契約は6年$126M(2018-23)で、これは2017年のオフにカブスとの間で交わされたものですが、2020年のオフにトレードされた際パドレスに引き継がれました。
そのためダルビッシュは今季終了後に37歳でFAとなるはずでしたが、昨年の素晴らしいパフォーマンスを受けて契約延長の噂自体は出ていました。

今回新たに結んだ6年$108Mという契約は今季から開始するもので、2028年の契約終了時にはダルビッシュは42歳になっています。これはあまりにリスキーな長さに感じるのではないでしょうか?
最近の高額契約のトレンドは大きく2種類に分かれます。
一つは単年あたりが高額な代わりに契約期間を短くするタイプ。これはメッツがシャーザーやバーランダーに対して使った手法で、AAV(単年あたりの平均年俸)が高くなる半面契約期間が2-3年と抑えられるためリスクを最小限にすることができます。
もう一つは単年あたりを抑える代わりに契約期間を長期にするタイプ。これは今オフパドレスがボガーツに対して使った手法で、契約期間が長くなるためリスクが上がる半面AAVを低く抑えることができ贅沢税対策になります。

現在36歳とベテランの域に達しているダルビッシュに相応しい契約は本来ならば前者の短期間高AAVタイプのはずでしたが、今回パドレスが結んだのは後者の長期間低AAVタイプ。
リスクを度外視してでもAAVを抑えたかったということです。
原契約がAAV$21Mだったところが新契約により今季からAAV$18Mに切り替わるため少し節約することに成功しています。
今最も話題に上がることが多いマチャドとの契約延長もこれで現実味を増したと言ってもいいかもしれません。

ダルビッシュの衰えは?

42歳までの契約なんて言われると誰もが気になるのが衰えです。
並の選手なら36歳の時点で引退を考慮しないといけない年齢であり、そこからさらに6年延長となると右肩下がりに衰えていく印象は否めません。
ダルビッシュが今まさにその下降線を辿っているのならば今回の契約は歓迎できるものではありませんが、その衰え具合はどうでしょう?

まず最も衰えが出やすい球速を確認してみます。
2022年の4シームの平均球速は95.0mphで、これはキャリア2番目の数字。最も速かったのはサイ・ヤング賞投票で2位に入った2020年の96.1mphですが、これは短縮シーズンだったことも影響しているでしょう。
メジャーデビュー1年目の2012年は平均93.5mphだった速球は徐々に94mph台へと上昇していき、昨季はついに95.0mphに到達したわけです。
また、最高球速も若いころと比較して遜色ありません。
メジャーキャリアでの最速は2013年の99.0mphですが、それ以外の年は毎年最速98mph前後で推移しており、昨季は98.1mphを記録しています。
球速に関しては全く衰えを感じさせません。

続いてダルビッシュの代名詞とも言える奪三振。
メジャーデビューした2012年から毎年10.00以上を記録してきたK/9は昨季9.11にまで急降下しました。普通ならこれは衰えの合図ですが、ダルビッシュの場合は投球スタイルの変化と捉えたほうが良さそうです。
元々奪三振も四球も多いという投球スタイルでしたが、昨季からよりストライクゾーンで勝負して球数を抑えることで長いイニングを投げるスタイルへと変化。
この意識の変化はデータにも現れており、昨季の初球ストライク率はキャリアハイの64.2%を記録しています。
その結果としてBB/9はキャリア2番目の高水準である1.71となり、K/9がキャリアワーストだったにも関わらずK/BBは5.32でこちらも2020年に次ぐキャリア2番目の数字です。
つまり、球速同様フルシーズンとしては今がキャリアハイの数値を残しています。

ここまで見ると衰えなど全くないように見えますが、気になるデータもないわけではありません。
昨季は被バレル率と被コンタクト率がキャリアワースト、ゾーン内コンタクト率がキャリアワースト2位の数字でした。
前述のよりストライクゾーン内で勝負する配球の影響によるものと思われますが、20代の頃ほど空振りをとれなくなりつつあるということは間違いないでしょう。
危険視すべきほどではないものの、この先球速が低下してきた時により被打率、被弾率が上がるリスクはあります。

今後の先発ローテーション展望

来季以降のパドレスの先発ローテーションは、ダルビッシュスネルが同時にFAになるというリスクを抱えていました。
昨季途中にゴアをトレードしたことで、20代前半の今後を担う若手先発候補はモレホンただ一人。
昨年のドラフトでは上位指名を投手で揃えるなど投手のプロスペクト層強化に勤しみましたが、現状トッププロスペクトと目されるレスコスネリングらがメジャーデビューするのには最低でも3年以上かかるでしょう。
そのため、今回の契約延長によってマスグローブダルビッシュというデュオが今後5年間は維持されるということは有難い。

スネルのFAを避けられないとした場合、現有戦力ならば2024年以降の先発ローテーションは以下のようになります。

ダルビッシュ(-2028)
マスグローブ(-2027)
マルティネス(-2023+24-25オプション)
ルーゴ(-2023+24オプション)
モレホン(-2025)

パドレスの抱える長期契約

パドレスの保有する5年以上の長期契約は2023/02/10時点で以下の通り。

フェルナンド・タティスJr. 14年$340M(2021-34)

ザンダー・ボガーツ 11年$280M(2023-33)

マニー・マチャド 10年$300M(2019-23+24-28オプション)

ダルビッシュ有 6年$108M(2023-28)

ジョー・マスグローブ 5年$100M(2023-27)

ブレイク・スネル 5年$50M(2019-23)

今オフまとめた主な契約だけでボガーツに$280Mダルビッシュに$108Mスアレスに$46Mマルティネスに$26Mルーゴに$15Mカーペンターに$12Mクルーズに$1Mと、合計で$488Mに上ります。
パドレスがこんな風になるなんて想像できました?

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