近年トレードデッドラインの大型トレードを振り返る

MLB

毎年話題になるトレードデッドラインの季節が今年もやってまいりました。
今年のトレード期限は現地時間8月1日午後6時(日本時間8月2日午前7時)となっており、期日まではあと一週間ほどとなりました。
今年は特に大谷が話題の中心ということもあり、MLBファンの間では「この選手はどこに行くんだろう?」「この選手はトレードされるんだろうか」と色んな議論が飛び交っています。

本来なら今回誰がどこにトレードされるかを予想する記事でも書きたいところなのですが、残念ながら私は内部情報に詳しい記者ではありませんので拙い妄想を垂れ流すだけの記事になってしまいます。
そこで今回は、妄想ではなく近年(2021~22年シーズン)実際に起こった大型トレードをいくつか振り返る程度にとどめて、ここから一週間どんなトレードが起こるかのみなさんの予想材料にしてもらえたらと思います。

*今回は一度に5人以上の選手が動いたトレードを大型トレードと定義しています
*文中に登場する「0.5シーズン」はそのシーズン終了時にFAになることを、「1.5シーズン」は翌シーズン終了時にFAとなること、「2.5シーズン」は翌々シーズン終了時にFAになることを示します

2021年の大型トレード

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当時得点力不足に悩んでいたヤンキースが左打ちの強打者として目をつけたのがギャロでした。
ギャロは1.5シーズン残っているということで、ヤンキース側が放出したのは球団30位以内のプロスペクト4人。
有名所のトッププロスペクトは誰も放出せずにすんだのですが、移籍後のギャロは打率1割台と低迷したばかりか翌年のデッドラインで再びトレードすることに。
一方で対価として移籍した4人うちの一人デュランがレンジャーズの重要な戦力として大きく貢献しています。
複数ポジションを守れるユーティリティ性を売りにヤンキースが欲しかった外野も守って活躍しているのですから、ギャロを売り時で手放したレンジャーズの作戦勝ちといったところでしょうか。

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超大物が2人も動いた2021年を代表するブロックバスタートレード。
当時チーム大解体を試みていたナショナルズは、シャーザーとターナーをセットで放出。
シャーザーは0.5シーズンのレンタルでしたがターナーは1.5シーズンだったことでドジャースは相当な対価を用意しました。
このパッケージに入ったルイーズは当時ドジャースの1位プロスペクト、グレイは2位プロスペクトであり、ドジャース側が用意できるプロスペクトとしては最高のものでした。
ルイーズは正捕手として定着し今季からの8年契約に合意、グレイは右のエースとして活躍しており今季のオールスターにも選出されました。
残りの2選手も現在ナショナルズ傘下マイナーにいますが、2人ともメジャー昇格にはかなり時間がかかりそうな状況です。

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ギャロを放出して解体に向かったレンジャーズはエース級の活躍をしていたギブソンと守護神ケネディの両方を一度に放出。
ギブソンは1.5シーズン残っていたこともあり、レンジャーズは元トッププロスペクトですでにメジャーデビュー済だったハワードの獲得に成功しました。
レンジャーズ側の思惑としてはこのハワードが今季くらいには立派なローテ投手になると見込んでいたはずですが、移籍後に成績を悪化させた彼は翌年になっても結果を出せず、今季もほとんどマイナー暮らしと消えた元トッププロスペクト状態になっています。
一方のフィリーズとしても大成功トレードとは言えず、メインで獲得したギブソンは移籍後の1.5シーズンで防御率5点台、ケネディも移籍後に防御率4点台と成績悪化してしまいました。

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こちらもナショナルズ大解体の一環。
この年好調だった0.5シーズンのゴームスとハリソンをセット売りしてできるだけいい若手を引き出そうという試みで、守備力に定評のあったミラスという捕手プロスペクトの獲得に成功しました。
ミラスは現在ナショナルズの28位プロスペクトで、将来像は控え捕手といったところでしょうか。
まあ0.5シーズン選手のトレードだとこんなものですね。

2022年の大型トレード

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昨季動いた中では最も大物だったカスティーヨをマリナーズが獲得したトレード。
1.5シーズン残るエース級投手を獲得するために多くのトッププロスペクトを軒並み放出するというわかりやすい構図で、獲得後のマリナーズはシーズン中に彼との契約延長まで済ませてしまいました。
移籍後も素晴らしいパフォーマンスをみせたカスティーヨの活躍もあり、マリナーズは21年ぶりのプレーオフ進出を果たすことができたのですからこのトレードは大きな価値を持ちましたね。
対価となったプロスペクトのうち3人はマルテ(球団1位)、アローヨ(球団3位)、スタウト(球団5位)というかなり贅沢なもので、スタウトは今季デビュー済み、残り2人は今レッズの1, 2位プロスペクトとなっています。
若手有望内野手を多く保有しているレッズは、今後マルテやアローヨをトレードのコマとしてさらなる強化を図る可能性もあり、今のところこのトレードは両者にとって大きなプラスになっているように思います。

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デッドラインでの大型トレードの怖さを感じるヤンキースの失敗。
先発ローテ、ブルペンの強化としてモンタス、トリビーノを獲得。
球団内30位に入るプロスペクトを4人放出したからというよりは、メインパッケージであるモンタスが全く機能しなかったのがヤンキースにとっての想定外でした。
1.5シーズンのモンタスが先発ローテの柱の一人になることが期待されていましたが、ヤンキース移籍後は8先発で防御率6.35とボロボロ。さらには今季開幕前に肩の手術を受けシーズン大半を欠場することに。シーズン終盤に復帰できるかどうかという状況。
さらにトリビーノは移籍直後は活躍したものの、今季はトミー・ジョン手術で全休。おそらく復帰は来季終盤以降になります。
アスレチックスに移籍したウォルディチャックやメディナはまだメジャーレベルでは苦しんでいるものの、シアーズは普通に先発ローテを守れる投手に成長しているのでヤンキースファンは涙が止まらないでしょうね。

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売り手となったオリオールズが残り0.5シーズンのマンシーニを放出する際に成立した三角トレード。
アストロズとしては獲得したマンシーニが打率1割台かつポストシーズンでも打てなかったので残念な結果に終わったのですがワールドシリーズ優勝できたので結果オーライでしょうか。
意外だったのがここでレイズに移籍したシリが今季大ブレイクしたこと。
当時は打率1割台の守備型とうい感じでしたが、今季はここまで20HRを放つ大暴れを見せており、レイズには欠かせない戦力になっています。
オリオールズが獲得したマクダーモットは球団17位プロスペクトになっており、もう24歳とあまり若くはないのですが今後の活躍に期待というところです。

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0.5シーズンのロジャース、1.5シーズンのヘイダーという不振の守護神同士を入れ替える形のトレード。
ヘイダーは素晴らしい実績+1.5シーズンということでパドレスはルイーズとガッサーの2人のプロスペクトを放出。
ヘイダーが移籍後に立ち直りポストシーズンでは獅子奮迅の活躍を見せた一方、ロジャースはパフォーマンスが回復せず重要な場面で失点することが何度もありました。
ちなみにラメットは移籍翌日にDFAに。
このトレードはブルワーズにとって大きなダメージになったかのように思われましたが、オフにはルイーズを三角トレードの駒としてコントレラス獲得に成功。
ガッサーもプロスペクトとして評価を高めており、ブルワーズとしても存外悪くない結果になったのかもしれません。

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2022年最大のブロックバスターと言っていいでしょう。
前年にチームを大解体したナショナルズにまだ残っていた若手スーパースターのソトが、ナショナルズからの15年$440Mという超巨額オファーを断ったことで一躍トレードデッドラインの目玉候補に。
ソトは2.5シーズン残る選手だったということもあってコンテンダーが争奪戦を繰り広げましたが、最終的には必死度の最も高かったパドレスが獲得に成功。
デビュー済みの若手(ゴア、エイブラムス)、トッププロスペクト(ハセル、ウッド、スサナ)、ベルの穴埋め一塁手(ボイト)の6人を一挙放出する大型パッケージを以てソトとベルを獲得しましたが、このボイトの枠は当初ホズマーだったのにホズマーがトレード拒否権を行使してボイトがとばっちり移籍する羽目になったという小話もついています。

ナショナルズでプレーすることになったゴアとエイブラムスは今季もしっかりメジャーに定着し活躍中。
当初既に評価を落としつつあったハセルは移籍後さらに評価を下げていますが、同じく外野手のウッドは現在全体4位にランクインするほどの大物プロスペクトになりました。
スサナも将来エースになりそうなポテンシャルの高さを見せつけており、ナショナルズ側としてもこのトレードは今後の礎として十分に機能していそうです。
ちなみにボイトはシーズン終了後にFAとなり、今季はブルワーズに加入するも結果を出せずにメッツとマイナー契約しました。パドレスにいた時結構好きだったので悲しいね。NPB挑戦とかどうだろうか?

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このトレードは私もいまいち理解できていません。
メッツが不振気味だったデイビスを放出し、より長打に期待のできるラフで対左の右打者をアップグレードしようとした感じでしょうか。
結果的にメッツにとっては大失敗トレードとなってしまい、獲得したラフは移籍後HRが0。
放出したデイビスはジャイアンツ移籍後に打棒を取り戻し今季も立派な主力として活躍しています。

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このトレードは、デッドラインで思わぬ拾い物ができた好例かもしれません。
当時オリオールズで防御率1点台のクローザーとして大活躍していたロペスをツインズが獲得したトレード。
対価が低くなりがちなリリーフ投手ではありましたが、2.5シーズン残っているということでオリオールズは4人の選手を獲得しました。
この中で球団30位以内に入るレベルの若手はポヴィッチくらいだったのですが、ご存じのファンの方も多いように今季カノーが突如大ブレイクし、不動のセットアップとしてオールスターに選出されるほどのセンセーショナルな前半戦を過ごしました。
おそらくほとんどの人が注目していなかったおまけ的選手が翌年いきなりオールスターになるという夢のような拾い物ができたトレードでした。
こういうことが起こるからMLBのトレードは面白い。

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