まるで映画のような結末!『フィールド・オブ・ドリームス』ゲーム

『フィールド・オブ・ドリームス』ゲーム MLB
MLB.comより引用

現地時間の8月12日、史上初となるアイオワ州でのメジャーリーグの試合が行われました。
アイオワ州を舞台にした1989年の映画『フィールド・オブ・ドリームス』にちなんで開催されたイベントです。
その結末は、一夜限りのイベントにふさわしいあまりにも劇的なものになりました。

フィールド・オブ・ドリームス

『フィールド・オブ・ドリームス』は野球を題材にした映画で、アメリカや日本といった野球が広く親しまれている国でヒットし、アカデミー賞にもノミネートされた名作。

簡単なあらすじを紹介します。*ネタバレなし
アイオワ州の田舎町に住む農家のレイ・キンセラ(ケビン・コスナー)は、ある時「If you build it, he will come.(それを作れば、彼は来る)」という声を耳にします。
そこで彼はトウモロコシ畑を野球場に作り替えると、ある日その野球場に既に他界したはずの野球選手ジョー・ジャクソンの姿が。
そしてそこから野球場をめぐって様々な出来事が起こっていく。

ジョー・ジャクソンとブラックソックス事件

ジョー・ジャクソンはシューレス・ジョーという愛称で親しまれたスター選手でした。
歴代3位となる通算打率.356を記録している好打者ですが、ホワイトソックスでプレーしていた1919年にワールドシリーズでの八百長を疑われ、1921年に彼を含む8選手が球界から永久追放されました。
このことは「ブラックソックス事件」と呼ばれ、MLBの不名誉な歴史になっています。

永久追放された中で最もスター選手であったジョー・ジャクソンが法廷で八百長を認めて裁判所から出てきた際に、ファンの少年が「Say it ain’t so, Joe!(嘘だと言ってよ、ジョー!)」と叫んだとされる逸話がありますが、これは事実ではなく脚色されたもののようです。
しかしこのフレーズはMLB史を代表するものとして定着しており、現在でもなお時々似たようなフレーズが使われています。

ちなみに、上述の映画『フィールド・オブ・ドリームス』の原作小説の題名は『シューレス・ジョー』でした。

アイオワ州初の試合

そもそも今回の『フィールド・オブ・ドリームス』をモチーフにした試合は、当初2020年8月13日にホワイトソックス対ヤンキース戦で行われる予定でした。
ところが新型コロナウイルスに係るシーズン短縮化に伴い、7月のホワイトソックス対カージナルス戦へと変更。
その後やはり試合開催は延期ということになりました。

延期された試合は2021年の8月12日のホワイトソックス対ヤンキース戦で開催されることとなり、今回の実現に至りました。
アイオワ州では史上初のメジャーリーグの試合となり、トウモロコシ畑の中に本当に建設されたノスタルジックなスタジアムが舞台となりました。
この日のためにホワイトソックスとヤンキースはそれぞれレトロな専用ユニフォームを発表(ヤンキースはあまり普段と変わらないと批判されましたが)。
試合前には外野のトウモロコシ畑から、劇中で主人公を演じたケビン・コスナーが出てきて、その後両チームの選手たちが同じトウモロコシ畑から現れるという感動的な演出で彩られました。

試合は映画顔負けの劇的な結末に

そうして始まったホワイトソックス対ヤンキースのこの試合。
特別な試合ですから、やはり特別な展開になることを誰もが望んでいたでしょう。
そして驚くことに、本当にその通りの展開になったのです。

先発投手はホワイトソックスがランス・リン、ヤンキースがアンドリュー・ヒーニー。
リンはサイ・ヤング賞候補の一人なのに対して、ヒーニーは防御率5点台ですから、ホワイトソックスがかなり有利なカードでしたが、意外にもシーソーゲームになりました。
ホワイトソックスがまず初回にアブレイユの本塁打で先制すると、3回表にヤンキースはジャッジが逆転本塁打。
さらにその裏には今度はホワイトソックスのヒメネスから逆転本塁打が飛び出します。

その後はホワイトソックス優位の展開で進めていましたが、ドラマは7-4の9回に起こりました。
3点差ということでホワイトソックスは守護神リアム・ヘンドリックスを登板させますが、2アウトまで追い詰めたところでジャッジにこの日2本目となる本塁打を打たれ1点差となります。
続くギャロを歩かせたところで、スタントンに逆転本塁打を浴び、この回一気に4点を奪われて逆転を許しました。

ホワイトソックスにとっては絶対勝たなくてはならないこの試合で、9回裏7-8と追い詰められていましたが、ドラマはまだ終わりません。
1アウトになったところからザバラが死球で塁に出たところで、続くティム・アンダーソンが初球をライト方向へ飛ばし、劇的な逆転サヨナラ本塁打。
一度は零れ落ちた聖地での勝利をフランチャイズスターがもう一度手繰り寄せました。

『フィールド・オブ・ドリームス』ゲームのスコア

今後の『フィールド・オブ・ドリームス』ゲーム

今回の試合では、トータル8本塁打が飛び交う空中戦の末、ホワイトソックスが劇的な逆転サヨナラ勝利を収めました。
まるで映画のようなこの展開には、ファンから毎年このイベントをやるべきだという声も高まっていましたが、コミッショナーはこの『フィールド・オブ・ドリームス』ゲームについて、「来年も戻ってくる」と明言。
どのカードが組まれるかはまだ不明ですが、来季の8月に再度このイベントを行うことは間違いないようです。
来季も成功すれば、今後は毎年恒例のイベントとしてファンに受け入れられるかもしれません。

日本ではプロ野球でいわゆる地方巡業が行われることはよくありますが、アメリカは基本的にそういうことはありません。
その代わり、野球普及のため日本やイギリスなど海外で公式戦を行うことはこれまでもありました。
しかし、今回のアイオワ州での試合をきっかけに(といっても『フィールド・オブ・ドリームス』は特別ですが)、今後はこれまでメジャーリーグのなかった州でも試合が開催されることがあるかもしれませんね。

それにしても、映画をモチーフにした試合で映画みたいな劇的幕切れがみられるとは、野球は本当に面白い。
ヤンキースのデレク・ジーターが、自身の現役最後のホーム試合でサヨナラヒットを放った時と同じくらい感動しました。
こういうこと、本当に起こるんですよね。

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