大谷翔平が敵地ヤンキースタジアムで26号本塁打を放ち、エンジェルスもヤンキースに無事勝利した本日の試合。
勝利したとは言え先発のバンディが二回にマウンド上で嘔吐するトラブルで降板し、またしても先発投手がQS(クオリティスタート)を記録することができませんでした。
エンジェルスの先発投手が最後にQSを記録したのは6/23の大谷。その前のQSも6/17の大谷です。
それでは大谷以外の先発投手でQSが記録されたのはいつなのか?なんと6/14のパトリック・サンドバルまでさかのぼります。
つまりエンジェルスはもう半月の間、大谷以外の先発投手が先発としての仕事を全うしていないのです。
今回は、これほど悲惨な状態のエンジェルスに、投打に活躍する大谷以外の希望があるのかを分析していきます。
エンジェルスのチーム成績
勝敗
現在のエンジェルスは、38勝40敗 勝率.487と負け越しています。
ア・リーグ西地区では4位で、3位のマリナーズはともかく1位のアストロズ、2位のアスレチックスがリーグ有数の勝率を維持しているため、今季のプレーオフ進出の可能性は限りなく低いと言っていいでしょう。
打撃成績
得点 377(リーグ5位)
安打数 669(リーグ4位)
二塁打数 144(リーグ3位)
三塁打数 9(リーグ8位)
本塁打数 194(リーグ3位)
打点 357(リーグ5位)
打率 .254(リーグ4位)
出塁率 .316(リーグ9位)
OPS .750(リーグ5位)
盗塁 28(リーグ11位)
ア・リーグ15チーム中5位に入っている打撃スタッツが多く、リーグでも上位の攻撃力と言えます。
もちろんこれには大谷も最も貢献していると言っていいでしょう。
しかし気になるのはやはり出塁率の低さ。
盗塁は少なくても大きな問題はありませんが、出塁率が平均以下というのはいただけません。
これでけの長打力がありながら四球獲得が少ないわけですが、トラウト以外の主力があまり待球タイプではないというのが響いていそうです。
投手成績
防御率 4.92(リーグ14位)
先発防御率 4.94(リーグ13位)
リリーフ防御率 4.94(リーグ14位)
セーブ 18(リーグ9位)
被本塁打 100(リーグ11位)
奪三振 760(リーグ2位)
四球 302(リーグ14位)
WHIP 1.40(リーグ13位)
ご覧の通り、奪三振以外のスタッツが軒並みリーグ下位に沈んでいます。
どこから手を付けていいかわからない壊滅状態で、とにかく最大の原因は四球の多さにありそうです。
三振がとれても四球でランナーを出せば意味がありません。
エンジェルスの個人成績
主力野手の打撃成績 *打数トップ10
デビッド・フレッチャー 打率.290 0本塁打 24打点 出塁率.320 OPS.663 3盗塁
ジャレッド・ウォルシュ 打率.283 18本塁打 53打点 出塁率.345 OPS.901 2盗塁
大谷 翔平 打率.276 26本塁打 60打点 出塁率.360 OPS1.031 11盗塁
ホセ・イグレシアス 打率.260 5本塁打 22打点 出塁率.287 OPS.655 2盗塁
ジャスティン・アップトン 打率.247 14本塁打 32打点 出塁率.336 OPS.816 3盗塁
アンソニー・レンドン 打率.230 5本塁打 33打点 出塁率.313 OPS.673 0盗塁
テイラー・ウォード 打率.235 7本塁打 27打点 出塁率.317 OPS.749 1盗塁
フアン・ラガレス 打率.231 2本塁打 18打点 出塁率.257 OPS.617 0盗塁
ホセ・ロハス 打率.190 3本塁打 8打点 出塁率.246 OPS.610 2盗塁
マイク・トラウト 打率.333 8本塁打 18打点 出塁率.466 OPS1.090 2盗塁
ご覧の通り、大谷、ウォルシュ、トラウト、アップトンとそれ以外と分類してもいい数字です。
しかもトラウトは現在60日のIL入りしていますから、打線で頼りになるのが3人しかいないわけです。
リーグ上位の打撃力は、これらの選手に依存してのものだということがよくわかります。
ちなみに大谷は現在本塁打、打点、盗塁でチーム内三冠王です。もしこのままで打率を向上させることができるのであれば、チーム内四冠王を目指せそうです。
逆に非常にがっかりさせられるのがレンドン。
彼は大型契約でエンジェルスに加入し、昨季はそれに見合った好成績を残しました。
しかし今季は並以下のパフォーマンスで、序盤調子が悪くてもそろそろ数字を上げてくるかと思いきや、6月に入っても例年の彼とは程遠い出来でした。夏場の爆発を期待したいところですが、彼ももう31歳ですから、どうでしょうか。
主力先発投手の成績 *先発登板数トップ7
ディラン・バンディ 1勝7敗 防御率6.78 65.0回 60奪三振 WHIP1.42
アンドリュー・ヒーニー 4勝5敗 防御率4.72 68.2回 85奪三振 WHIP1.27
グリフィン・カニング 5勝4敗 防御率4.95 60.0回 62奪三振 WHIP1.42
アレックス・カッブ 5勝3敗 防御率5.09 53.0回 63奪三振 WHIP1.30
大谷 翔平 3勝1敗 防御率2.58 59.1回 82奪三振 WHIP1.18
ホセ・キンターナ 0勝3敗 防御率7.12 36.2回 56奪三振 WHIP1.91
パトリック・サンドバル 2勝2敗 防御率3.89 44.0回 46奪三振 WHIP1.25
野手の方はまだ大谷以外でも好成績を残している選手がいましたが、先発投手陣には皆無です。
まだ比較的マシと言えるのが24歳のサンドバルですが、他のベテラン勢は完全に足を引っ張っています。
大谷は野手に専念した方がいいという議論が交わされているのをよく聞きますが、今のエンジェルス先発ローテーションから大谷が抜けると本当に勝てなくなりそうです。
主力リリーフ投手の成績 *登板数トップ5
スティーブ・シーシェック 防御率3.55 33.0回 33奪三振 WHIP1.48
マイク・マイヤーズ 2セーブ 防御率4.30 37.2回 54奪三振 WHIP1.43
アレックス・クラウディオ 1セーブ 防御率4.88 27.2回 26奪三振 WHIP1.34
ライセル・イグレシアス 14セーブ 防御率3.74 33.2回 53奪三振 WHIP0.98
トニー・ワトソン 防御率5.25 24.0回 16奪三振 WHIP1.17
長くなるのでこれ以外の投手は省略していますが、10登板以上しているなかで防御率3点台に収まっているのはイグレシアス、シーシェック、クリス・ロドリゲスの3人のみで、あとは全員4点台以上の酷いリリーフ陣です。
リリーフ陣も多数登板しているのが中堅・ベテランばかりで、これなら全員若手に総とっかえした方がいいのでは、と思う陣容です。
今後の上がり目は?
中堅・ベテラン
なんといってもやはりトラウトの復帰が最も大きな戦力増強に繋がります。
ただし、4月は圧倒的だったものの5月は打率.182に急降下しており、復帰しても4月のようなパフォーマンスを見せられるかはわかりません。
それでも今のエンジェルス打線ではアップトン以外の外野手がかなり貧弱なので大幅アップデートになります。
6月から正捕手に復帰しているマックス・スタッシも打線で重要は役割を果たすことになりそうです。
6月は打率.306 4本塁打 OPS.950と強打者のスタッツをたたき出しており、大谷の陰に隠れながらも活躍しています。
投手陣ではイグレシアスに安定感が出始めているのは朗報です。
失点はしているものの、並のクローザーレベルにはなってきています。
彼の実績を考えるとそれでは物足りませんが、少なくとも昨季くらいの投球をしてくれればひとまずクローザーに苦しむことはなさそうです。
若手
今季まだメジャー昇格していないジョー・アデルが、もしかするとサプライズ戦力になるかもしれません。
エンジェルス期待のプロスペクトとして満を持してデビューした昨季は38試合で打率.161 OPS.478と全く通用しませんでした。
もう一度下でやり直しとなった今季はAAAで16本塁打 OPS.915と活躍しており、長打力はかなりアップデートされている様子です。四球が少なめで三振が多いのは気になりますが、彼はまだ22歳ですし今後も改善の余地があると思われます。
エンジェルスGMは彼を次にメジャー昇格させるときは、しばらくメジャーで固定させることになる、と発言しており、変わらず彼を将来の外野の一角として見ています。
現在外野手はアップトン、ラガレス、ウォードの3選手が主にプレーしていますが、トラウトが復帰するとラガレスと入れ替わることになるでしょう。あとはウォードとアデルをどのタイミングで入れ替えるか。ウォードが不調でアデルが好調の今、もしかしたら近いうちにアデルの昇格もあり得るかもしれません。
投手では最近ローテーションに定着した左腕のパトリック・サンドバルと、リリーフとして活躍しているこちらも左腕のホセ・スアレスが期待できます。
サンドバルはまだ今季最長6回までしか投げていませんが、6月の登板試合は全て5回以上を投げ3失点以内に抑えています。大崩れせず試合を作ってくれる投手は現状大谷以外ではサンドバルしかいません。
スアレスは今季9試合に登板して防御率1.98とかなり好投しています。使われ方は先発が早い回で降りた際のロングリリーフで、バンディが2回途中で降板した本日のヤンキース戦では、その後をうけて5.1回1失点とヤンキース打線を抑え込みました。
2019年のメジャーデビューイヤーでは81.0回で防御率7.11と先発ローテーションに入って撃ち込まれましたが、今季これだけの投球をロングリリーフで見せているわけですから、当然ローテーション入りを考慮すべき投手です。
この2人の左腕が期待通りの活躍でローテーションに定着してくれれば、大谷、サンドバル、スアレスの三本柱ができてかなり見栄えがよくなるのではないかと思います。
エンジェルスの後半の展望は?
私個人的には、もう今季のエンジェルスは再建モードに入るべきだと感じています。
再建と言っても主力を売り渡すわけではなく、ベテランの起用をやめて若手主体に切り替えるという意味です。
大谷とトラウトは魅力ですが、来季以降に勝負をかけるために今は英気を養う時ではないかと思います。
特に、来季までにせめてリーグ平均レベルの先発ローテーションを作り上げることは急務でしょう。
今季のエンジェルスは大谷翔平以外の希望がないと言っても過言ではありません。
エンジェルスは大谷のためのチームでは決してありませんが、それでも今ファンが最も楽しみにしているのは大谷の活躍です。
今季は再建と大谷をフルシーズン活躍させることでファンを喜ばせるということに注力してもいいのではないかと思います。
トラウトの全盛期が本当にもったいないですけどね。