今季開幕前、ワールドシリーズ制覇の最有力候補となっていたのはナ・リーグ西地区に所属するドジャースとパドレスでした。
昨季ワールドシリーズ制覇を果たしたドジャースはサイ・ヤング賞投手のトレバー・バウアーをFAで獲得し、勝負に出たパドレスはダルビッシュ有、ブレイク・スネル、ジョー・マスグローブといった一線級投手を相次いでトレードで補強しました。
これにより、開幕前から最強チームはドジャースか?パドレスか?といった話題で盛り上がるほどでした。
しかし、レギュラーシーズン終了まで2ヶ月を切った8月18日現在、そのどちらのチームも地区首位に立てていません。
現在のナ・リーグ西地区首位はジャイアンツ。
これは誰もが想定していなかったサプライズでした。
ジャイアンツはMLB全体でも最高といっていいパフォーマンスを維持し続けており、2位にドジャース、3位にパドレスが続きます。
ドジャースはジャイアンツを上回ることができなくてもワイルドカードでのプレーオフ進出はほぼ確実な状況ですが、パドレスに関しては後ろにレッズが肉薄してきており、プレーオフを逃す可能性もあります。
ジャイアンツが強すぎるというのはもちろんですが、本来ならそれはドジャースの立場になるはずでした。
最強戦力を保持しながら2位に甘んじるドジャースと、プレーオフすら危ういパドレスには実はある共通点があります。
それは、MLB最強と評されていた先発ローテーションが共に崩壊しているということ。
以下で、それぞれの状況について詳しく解説していきます。
ドジャースの先発ローテーション事情
開幕前に想定されていた先発ローテーション
ローテ投手 | 2020年成績 |
---|---|
クレイトン・カーショウ | 6勝2敗 防御率2.16 58.1回 62奪三振 WHIP0.84 |
トレバー・バウアー | 5勝4敗 防御率1.73 73.0回 100奪三振 WHIP0.79 |
ウォーカー・ビューラー | 1勝0敗 防御率2.09 36.2回 42奪三振 WHIP0.95 |
フリオ・ウリアス | 3勝0敗 防御率3.27 55.0回 45奪三振 WHIP1.15 |
ダスティン・メイ | 3勝1敗 防御率2.57 56.0回 44奪三振 WHIP1.09 |
生え抜き大エースのカーショウ、2020年サイ・ヤング賞のバウアーの左右のサイ・ヤング賞デュオを中心に、順調にエースへの道を歩んでいるビューラーとウリアス、そこにもっとも若い剛腕メイが加わるという構図でした。
間違いなくMLB最強の布陣であり、全員が防御率2点台&二桁勝利を達成してもおかしくありませんでした。
怪我人続出と想定外の離脱
この最強ローテーションにとって一番怖いのは怪我ですが、谷間の先発ができる投手としてトニー・ゴンソリンやデビッド・プライスらも控えていますから、多少の故障者には動じないはずでした。
ところがまずは5月2日に5番手のメイがIL入りすると、トミー・ジョン手術のためいきなり今季絶望となります。
さらに5月16日には、バウアーがある女性に対して暴行をしたということで警察が捜査を行っていると発表されました。
しばらくは試合に出場していたバウアーですが、捜査のため7月2日に制限リスト入りし、そもそも再び野球選手としてプレーできるか危うい状況に陥っています。
続いてここ数年は毎年故障離脱するカーショウが、7月7日にIL入り。
最初は10日のILでしたが、復帰までは長引きそうということで8月9日に60日のILへと変更されました。
復帰するのは9月になると見込まれています。
これによってドジャースは、ローテーションの中心であったサイ・ヤング賞投手二枚看板を両方とも失うことになりました。
それでもサイ・ヤング賞級の活躍をするビューラーと最多勝争いをするウリアスを軸になんとかやりくりしていたドジャースですが、8月14日にはウリアスがIL入りし、ついに当初のローテーションからビューラー以外の4投手が消える事態となりました。
7月末のトレードデッドラインで、ナショナルズからマックス・シャーザーを獲得していたおかげで、現在はビューラーとシャーザーのエース級二枚看板とその他の投手でなんとかやりくりしていますが、かなり苦しくなっています。
ちなみに谷間の先発投手として見込んでいたゴンソリンも7月31日にIL入りしています。
ウリアスはおそらく今月中には復帰する見込みですが、それでも当初見込まれていた先発ローテーションからは大きく見劣りします。
今季のドジャースで先発登板した投手は、なんと17人にものぼります。
ライバルであるジャイアンツが10人であることを考えると、如何に今季のドジャースが故障者に悩まされているかよくわかります。
パドレスの先発ローテーション事情
開幕前に想定されていた先発ローテーション
ローテ投手 | 2020年成績 |
---|---|
ダルビッシュ有 | 8勝3敗 防御率2.01 76.0回 93奪三振 WHIP0.96 |
ブレイク・スネル | 4勝2敗 防御率3.24 50.0回 63奪三振 WHIP1.20 |
ディネルソン・ラメット | 3勝1敗 防御率2.09 69.0回 93奪三振 WHIP0.86 |
ジョー・マスグローブ | 1勝5敗 防御率3.86 39.2回 55奪三振 WHIP1.24 |
クリス・パダック | 4勝5敗 防御率4.73 59.0回 58奪三振 WHIP1.22 |
ドジャースほどではないものの、パドレスの先発ローテーションも実績ある投手が並んでいました。
昨季ナ・リーグのサイ・ヤング賞投票でバウアーに次ぐ2位だったダルビッシュと、2018年にサイ・ヤング賞に輝いたスネルは、左右のエースとして移籍してきました。
ここに昨季サイ・ヤング賞投票4位とブレイクしたラメット、パイレーツから移籍のマスグローブ、将来のエースになることを期待されているパダックが揃います。
故障とパフォーマンス不足
ドジャースは投げればエース級の投手がこぞって故障離脱するという状況でしたが、パドレスの場合は少し事情が違います。
ラメットが開幕からいきなりIL入りしたものの、その他の4投手はほとんど先発ローテーションを守っていました。
ダルビッシュとマスグローブは序盤から好投し、マスグローブに至っては球団初のノーヒッターという快挙も達成しました。
ところが、エース格として獲得したスネルがキャリアワーストの不振に陥り、またパダックも防御率5点台の残念なパフォーマンス。
復帰したラメットはリハビリ感覚で登板してはすぐにIL入りするの繰り返しで、代役として開幕から好投していたルーキーのライアン・ウェザーズは、6月から急激に成績が悪化していき、未だに一度も6回以上を投げることがなく足を引っ張っています。
さらに7月に入ってからダルビッシュの成績までもが急降下。
8月15日には腰の張りでIL入りしました。
現時点でダルビッシュ、ラメット、パダックがIL入りしており、想定されていたメンバーで今残っているのはマスグローブとスネルだけです。
マスグローブは柱として信頼できるパフォーマンスを見せていますが、スネルはやや復調気味ではあるもののまだ不安定さがあります。
これほどの状況にも関わらずトレードデッドラインで先発投手を補強することが出来なかったパドレスは、頻繁にリリーフデーを作らなければいけないほどの窮状で、あまりにも台所事情が苦しいため、先日カブスから戦力外となったジェイク・アリエッタを獲得することになりました。
元サイ・ヤング賞投手の獲得と言えば聞こえはいいですが、今季の彼の成績は20登板で防御率6.88です。
本来なら獲得するチームがないような成績ですが、そんな投手に頼らなければならないほど追い込まれています。
序盤に先制点を献上するシーンが非常に多くみられ、もはや開幕前のファンが想像していた最強の先発ローテーションは見る影もないパドレスは、現在なんとかワイルドカード2位にしがみついている状況です。
同地区下位のダイヤモンドバックスとロッキーズにも立て続けに負け越す有様で、すぐ後ろに迫っているレッズに追い抜かれるのは時間の問題です。
故障者が復帰すれば問題が解決するドジャースとは違い、ダルビッシュやラメットが昨季のパフォーマンスを取り戻すことは難しそうなのがパドレスにとっては非常に痛いところです。