FA市場でレンジャーズが大暴れ

レンジャーズと契約したコーリー・シーガーとマーカス・セミエン MLB
@BleacherReportのTwitterより引用

続々と大物の契約が決まっているオフのFA市場で、レンジャーズが思わぬ大暴れを見せています。

レンジャーズのこれまでのFA契約選手

コーリー・シーガー(27)
試合打率本塁打打点出塁率OPS盗塁
95.3061657.394.9151
2021年シーズン成績

遊撃手豊作の今オフのFA市場において、カルロス・コレアに次ぐ存在とされていたシーガーですが、10年3億2500万ドル(オプトアウト条項なし)という超大型契約でレンジャーズと契約合意しました。
後述のセミエンとの大型契約合意の翌日の出来事で、球界を揺るがすビッグサプライズとなりました。
レンジャーズは2001年に、FAのアレックス・ロドリゲスと当時のスポーツ界最高額となる2億5200万ドルの10年契約の超大型契約を結びました。
今回のシーガーとの契約はそれを大きく超えるものであり、FA選手が結んだ契約としては、2019年のブライス・ハーパーの13年3億3300万ドルに次ぐ大きさとなりました。

27歳という若さですから10年契約も納得ですが、やや怪我がちな傾向もあり、非常にリスキーな契約でもあります。
また、遊撃手とは言えこれまで最高でも26本塁打と、打撃の傑出度としてはそれほどでもありません。
しかし、過去2年間に見せている打撃を、来季以降健康な状態で披露することができるのであれば、単年あたり3250万ドルという金額も妥当と言えるのかもしれません。
この契約は、”健康”と”遊撃手”を最後まで守り切ることができるかがカギになるでしょう。

マーカス・セミエン(31)
試合打率本塁打打点出塁率OPS盗塁
162.26545102.334.87315
2021年シーズン成績

シーガーとの合意の前日に、レンジャーズはセミエンとの7年1億7500万ドルの大型契約に合意しました。
このレベルの長期契約は、レンジャーズとしては2013年に結んだ7年1億3000万ドルのチュ・シンスとの契約以来です。
セミエンは今季二塁手としては歴代最多となる45本塁打を記録し、一躍FAの目玉選手へと躍り出ました。
ゴールドグラブ賞も受賞するなど、二塁手として攻守にわたりトップクラスの活躍が見込めますが、2020年までは主に遊撃手としてプレーしていたため、二塁手としても遊撃手としてもどちらでもいけるユーティリティ性も評価されていました。
セミエンはどちらのポジションで起用されるか不明でしたが、翌日にシーガーを獲得したことで、二塁手セミエン、遊撃手シーガーというリーグ最高級二遊間デュオが形成されることになりそうです。

ジョン・グレイ(30)
試合防御率投球回奪三振WHIP
298124.59149.01571.33
2021年シーズン成績

それほど大きな話題にはなっていませんでしたが、セミエンとの契約合意の直後にレンジャーズはグレイと4年5600万ドルという契約に合意しています。
グレイは2015年にロッキーズでデビューを果たし、2016年からは4年連続二けた勝利をあげるなどローテーションの主軸投手として活躍してきました。
ロッキーズの投手は、打者有利な本拠地クアーズ・フィールドで成績が悪化しやすいため、ホームよりアウェイでの成績が優れている傾向にありますが、グレイはホーム通算防御率4.54、アウェイ通算防御率4.65とほとんど変わりありません。
しかも、今季に限ってはホームで4.02、アウェイで5.22を記録するなど、防御率ではホームの方がいい数字を残しています。

コール・カルフーン(34)
試合打率本塁打打点出塁率OPS盗塁
51.235517.297.6701
2021年シーズン成績

レギュラークラスとは言い難いですが、レンジャーズはカルフーンとも1年520万ドルで契約しています。
今季の成績はキャリアワーストでしたが、昨季は54試合で16本塁打を放つなどパワーには定評があります。
2019年までエンジェルスでプレーしていたため、3年ぶりに慣れ親しんだア・リーグ西地区に帰ってくるということになります。
しかし、34歳という年齢もあって、あまり大きな期待はできません。

レンジャーズの2021年シーズン

2021年シーズンのレンジャーズは60勝102敗、勝率.370の地区最下位に終わりました。
下表の通り、とにかく投打ともにリーグワーストに近い数字で、100敗を喫するのも納得の惨状でした。

チーム成績数値 ア・リーグ順位
得点62515位
打率.23214位
本塁打16714位
OPS.67015位
防御率4.7913位
先発防御率5.3314位
リリーフ防御率4.139位
2021年シーズンのTEXのチーム成績

また、トレードデッドラインは数少ない主力スター選手であるジョーイ・ギャロ、カイル・ギブソン、イアン・ケネディをそれぞれ放出し、再建期に入るかと思われました。

2022年は一転攻勢へ?

2016年に地区優勝を果たしているレンジャーズですが、翌2017年からは低迷。
直近2年は地区最下位に沈んでいます。
上述の通り、今季のトレードデッドラインでまだ1年契約が残っていたギャロやギブソンを放出したことで、完全な再建期として有望株をそろえる段階に入ったかと思われましたが、ここにきて短期間の間に大型契約を乱発しています。
今が全盛期の野手をこれだけの巨額契約で複数獲得したということは、言うまでもなく2022年シーズンはプレーオフを狙いにいくということです。

しかし、今季は投打ともにワーストクラスであったため、これらの選手を補強してもプレーオフにはまだ遠いでしょう。
シーガー、セミエンを加えた現時点での野手の陣容は下表の通りになりそうです。

ポジション名前年齢試合打率本塁打打点出塁率OPS盗塁
Cホゼ・トリビアーノ2951.235517.297.6701
1Bネイト・ロウ26157.2641872.357.7718
2Bマーカス・セミエン31162.26545102.334.87315
3B?
SSコーリー・シーガー2795.3061657.394.9151
OFアドリス・ガルシア28149.2433190.286.74116
OF?
OF?
2021年シーズン成績

今季二塁と遊撃でそれぞれレギュラーだったニック・ソラック(26)アイザイア・カイナー=ファレファ(26)はコンバートされることになるのか、あるいはトレードの駒となるのかはまだわかりません。
突出した打力を持つ選手がおらず、リーグワーストだった得点やOPSを改善するためにはまだまだ補強が必要でしょう。

また、グレイを加えた先発ローテーションは現時点では下表の通りになりそうです。

ポジション名前年齢試合防御率投球回奪三振WHIP
SPジョン・グレイ30298124.59149.01571.33
SPマイク・フォルティネヴィッツ30282125.44139.0971.26
SPコルビー・アラード24323125.41124.21041.28
SPデイン・ダニング26275104.51117.21141.44
SPスペンサー・ハワード258039.7021.1211.78
2021年シーズン成績

グレイを加えても、とても上位を狙えるようなローテーションではなく、野手以上のテコ入れが必要になります。
少なくともエース級投手か、2,3番手クラスの投手が2人は加わらなければ難しいでしょう。
ハワードやグレン・オットーら若手投手は有望株ではありましたが、今のところメジャーレベルでは満足のいく結果を残せていません。
若手の飛躍に期待するのも厳しいかもしれません。

いずれにしても、このオフのレンジャーズは大方の予想を覆してオフの主役に躍り出ています。
わずか3日間のうちに5億ドル以上の契約を成立させました。
これは過去4年間のチームの総年俸を合計した4億1000万ドルを大幅に超える数字で、これが単なる暴挙になるのか、レンジャーズの逆襲の始まりになるのかはまだわかりません。

MLBがロックアウトになってしまう可能性もありますが、トレードも含めてレンジャーズがこれからどういう補強を行っていくのかは最大の注目ポイントになりそうです。

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