トレードデッドラインである7月30日まで残すところ1週間となりましたが、ついに大物のトレード移籍が決まりました。
ツインズの主砲ネルソン・クルーズが、有望株複数と交換でレイズへと移籍することになりました。
クルーズ移籍の可能性については、「今月トレードされそうなスター選手8選」でも解説していたのでご覧ください。
ネルソン・クルーズ(41)
クルーズは7度オールスターに選ばれたことのある、現役でも屈指の強打者です。
試合 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 打率 | OPS | 盗塁 |
---|---|---|---|---|---|---|
1827 | 1864 | 436 | 1202 | .278 | .878 | 79 |
上の表にある通り、通算成績は現役屈指のもので、特に本塁打は今季中の450本到達も視野に入っています。
これだけの通算成績を誇りながら、実は彼は非常に遅咲き選手でした。
メジャーデビューは25歳の時で、レギュラーとして初めて100試合以上に出場したのは、29歳になる2009年のことでした。
彼に関して興味深いデータがあります。
クルーズは35歳の誕生日までに216本塁打を記録していますが、なんと35歳になってから今までに記録した本塁打が220本とそれを上回っているのです。
35歳を過ぎてから彼以上に本塁打を記録したのは、バリー・ボンズ(340本)、ハンク・アーロン(245本)の2人だけです。ボンズはキャリア晩年はステロイド使用していたため除外すると、クルーズの比較対象はあの偉大なハンク・アーロンのみということになります。
しかも、もし来季も現役でやるのであればアーロンの記録を超えるのも夢ではありません。
本来41歳となると戦力としてカウントできないのですが、クルーズの場合は今でもどのチームでも主力をはれるくらいの打力を持っています。
今季もリーグで10指に入る打者として活躍しています。
ネックなのはDH専任であるという点だけです。
試合 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 出塁率 | OPS | 盗塁 |
---|---|---|---|---|---|---|
85 | .294 | 19 | 50 | .513 | .907 | 3 |
トレードの内容
レイズが獲得した選手:ネルソン・クルーズ、カルバン・ファウチャー
ツインズが獲得した選手:ジョー・ライアン、ドリュー・スロットマン
レイズが獲得したファウチャーは、25歳の右投手で今季はAAで防御率7.04ということなので完全に抱き合わせです。
一方でツインズ側が獲得した2選手はプロスペクトです。
ジョー・ライアンはMLB公式のプロスペクトランキングではレイズ内で10位の25歳右投手。
今季はAAAで投げていますが三振がとれてストライクゾーン内で勝負ができるタイプです。
ドリュー・スロットマンはこちらもMLB公式のランキングでレイズ内17位の評価を受けていた24歳右投手です。
正直どちらの投手もトッププロスペクトは言い難いです。
当然と言えば当然のことで、3か月のみのレンタル移籍になるかもしれないクルーズに対してそれほどの有望株を出すことはできません。
レイズは若いプロスペクトが充実しているので、この2投手の放出はほとんど痛手にならないでしょう。
ツインズの事情
ツインズは昨季地区優勝するなど、今季も事前の優勝候補の一角でした。
ア・リーグ中地区は、戦力充実のホワイトソックスと昨季優勝のツインズが優勝を争うものと思われていましたが、ふたを開けてみると序盤からツインズは停滞。
その原因は言うまでもなく投手陣で、昨季サイ・ヤング賞投票2位の前田健太をはじめ、昨季はリーグ上位に位置した先発、リリーフが揃ってリーグ下位にまで一気に落ち込みました。
これにはおそらく、レベルの劣る中地区のみで対戦した昨季の短縮シーズンのおかげで出来すぎだったというのも一因ではあると思いますが、同地区の他のチームより大幅に投手力が低下したことが原因で、今なお下位に沈んでいます。
そのため当然今季はあきらめて、今季で契約が切れる高齢のクルーズを商品価値があるうちにトレードに出そうということになりました。
問題は、今季も十分な活躍をみせているとは言え、来季以降の長期契約が望めないDH専任のクルーズで、どれだけのプロスペクトを獲得することができるかということでした。
レイズの事情
レイズは昨季、ア・リーグを制してワールドシリーズに進出しながらドジャースに惜しくも敗れてしまいました。
未だワールドシリーズ優勝経験がないレイズですが、資金力に乏しいため勝てるときを見極めて資金や人材を投資しなければなりません。
今季は、昨季最下位に終わったレッドソックスが強力打線を武器に地区首位にたっていますが、それを地味ながらすぐ後方から追いかけているのがレイズです。
このままいけば地区優勝を逃してもワイルドカードでプレーオフ進出する可能性も高い位置につけています。
今季のレイズの強みは、なんといっても盤石のリリーフ陣です。
先発投手の方はエースのグラスノーが故障で離脱する憂き目にあいましたが、リリーフは好成績の投手が多数おり、穴らしい穴がありません。
一方で、打線はネイト・ロウやマイク・ズニーノが一発の怖さを持っている一方で確実性のある打者がほとんどいないのが大きな弱点になっています。
昨季プレーオフで縦横無尽の活躍をみせた新人のアロザレーナは今季はやや物足りない数字に終始しています。
そこでその確実性に欠ける打線の強化のため白羽の矢がたったのがクルーズでした。
クルーズは高齢のため長期契約をする必要もなく、今オフにFAで出ていく前提でも問題ありませんし、まだやれそうなら来季も1年契約すればいいだけです。
3か月のレンタル感覚で獲得できる右の強打者というのはレイズにはうってつけの存在でした。
クルーズの獲得によって、レイズのポジションにはいくつかの変化が生じます。
現在主にDHでプレーしているのは今季16本塁打のオースティン・メドウズですが、彼はまだ若く守備につくのはなんの問題もありません。
そうなると現在外野陣を形成しているアロザレーナ、マーゴ、キアマイヤーの誰かが外野から抜ける必要がでてきます。
新人のアロザレーナはあり得ないので、マーゴ、キアマイヤーのどちらかが7月30日までに放出される可能性もあります。
もちろんコンバートするか控えにするという選択肢もありますね。