今回は両リーグのワイルドカード争いの展望について紹介します。
ワイルドカードとは
本題に入る前に、まずはMLBにおけるワイルドカードというシステムについて簡単に説明します。
MLBでは両リーグがそれぞれ3地区ずつに分かれていますが、他の優勝争いの展望についての拙稿をみていただくとわかる通り、地区ごとにレベル差が存在します。
勝率.550前後で優勝争いをする地区もあれば、中には今季のナ・リーグ西地区のように勝率.600越えで優勝争いをする地区も存在します。
そういった地区間のレベル差を考慮して考案されたのが、ワイルドカードというシステムです。
元々ワイルドカードは、各リーグから1枠ずつが出場していました。
ワイルドカードを獲得できるのは、3地区の2位チームの中で最も勝率が高いチームです。
そして、そのままディビジョンシリーズに出場するため、ワイルドカードは各地区の優勝チームとほとんど同等の扱いでした。
しかし、ワイルドカードからワールドシリーズ制覇する、いわゆる下剋上が頻繁に起こることがあり、地区優勝の価値がワイルドカードと同等なのもおかしいということがあって、近年システムが変更されました。
その変更された現在のシステムが、ワイルドカードゲーム制です。
従来の1枠ではなく、地区優勝できなかったチームの中で勝率1位と2位の2枠をワイルドカードとし、その2チームで1試合限りの一発勝負を行い、勝利チームがディビジョンシリーズに進出するというものです。
どんな強豪チームでも、一発勝負では負ける可能性もありますから、これにより地区優勝の重みが増したわけです。
参考記事:優勝争いの展望〈ナ・リーグ西地区〉
ア・リーグのワイルドカード順位
順位 | チーム | 勝 | 敗 | 勝率 | ゲーム差 | 直近10試合 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ブルージェイズ | 82 | 64 | .562 | – | 8-2 |
2 | レッドソックス | 83 | 65 | .561 | – | 4-6 |
3 | ヤンキース | 82 | 65 | .558 | 0.5 | 4-6 |
4 | アスレチックス | 79 | 67 | .541 | 3.0 | 5-5 |
5 | マリナーズ | 78 | 68 | .534 | 4.0 | 4-6 |
まずはア・リーグのワイルドカード順位からみていきます。
どの地区も、優勝チームはほとんど決まりつつあり、熾烈なワイルドカード争いが繰り広げられています。
上記5チームはどれも可能性がありますが、その中でもやはりア・リーグ東地区の3チームが最有力です。
ブルージェイズは、長らく東地区4位にとどまっていましたが、ここにきて一気に加速し、上位のレッドソックスとヤンキースを抜いて、ワイルドカード1番手につけています。
そこにわずかの勝率差で2番手につけているのがレッドソックスです。
ヤンキースは一時1番手だったものの、ここにきて雲行きがあやしくなってしまいました。
勢いを考えるなら、ブルージェイズはこのまま突っ走る可能性が高く、レッドソックスとヤンキースはいつ順位がひっくり返ってもおかしくありません。
この状況は最後まで続くかもしれませんね。
西地区のアスレチックスとマリナーズは、現状では東地区の3チームの争いに割って入るには勢いが足りません。
やはり今季はア・リーグ東地区のレベルが高すぎますね。
参考記事:優勝争いの展望〈ア・リーグ東地区〉
ナ・リーグのワイルドカード順位
順位 | チーム | 勝 | 敗 | 勝率 | ゲーム差 | 直近10試合 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ドジャース | 94 | 53 | .639 | – | 8-2 |
2 | カージナルス | 76 | 69 | .524 | – | 7-3 |
3 | パドレス | 76 | 70 | .521 | 0.5 | 4-6 |
4 | レッズ | 76 | 71 | .517 | 1.0 | 3-7 |
5 | フィリーズ | 74 | 72 | .507 | 2.5 | 4-6 |
ナ・リーグの方は、ア・リーグと比較するとレベルが落ちます。
まず、ワイルドカード1番手はすでに確定しています。
現時点ではドジャースですが、もしもドジャースが逆転地区優勝となった場合はジャイアンツと入れ替わることになりますが、いずれにしてもそのどちらかがワイルドカード1番手となります。
そうなると、残る2番手がどこになるか、です。
最近まではパドレスとレッズの争いだったのですが、両チームともに中々勝てない状況が続く中で、レッズの後ろにつけていたカージナルスが5連勝を記録してついに圏内に突入しました。
試合巧者のカージナルスがここにきて割り込んでくるのは流石と言う他ありませんが、実はカージナルスには不安材料があります。
それは、今後の日程でワイルドカード争いのライバルであるパドレスと3試合、そして中地区首位のブルワーズと7試合も当たるということです。
パドレスとの直接対決で負け越してしまうと逆転される可能性があるというのはもちろんですが、やはり同地区首位のブルワーズは非常に手ごわい存在で、負け越す可能性も高いでしょう。
そうなってくると、同じく今後の日程が厳しいパドレス、比較的楽な日程のレッズの三つ巴の中では、やはりレッズがやや有利ということになります。
レッズは今後パイレーツやナショナルズなど下位チームとの対戦が合計10試合控えています。
元々、パドレスとレッズがワイルドカード争いをしていた中で、ラスト一ヶ月の日程上レッズが有利と言われていたのですが、レッズは未だパドレスの後ろにいます。
決してパドレスの調子が良かったわけではなく、単純にレッズが下位チームから取りこぼしたが故です。
直近のパイレーツとの3連戦でも負け越し、今後の日程でも下位チームが相手だから盤石とも言えなくなってきました。
そういった点から、この三つ巴のワイルドカード争いは中々先が読めません。
もちろん、この3チームがそれぞれ低迷していれば、後ろからフィリーズが追い抜いてくる可能性もあります。
フィリーズはここにきて主砲ブライス・ハーパーが一気に数字を上げてきており、日程の楽さも考えると、可能性はあります。
もしもフィリーズが調子を上げてくるようであれば、地区首位のブレーブスがワイルドカード争いに落ちてくるということもあり得ます。
参考記事:優勝争いの展望〈ナ・リーグ東地区〉
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