ドラフト全体10位指名クマール・ロッカーは契約合意せず

クマール・ロッカー MLB
MLB.comより引用

2021年ドラフトでメッツより1巡目全体10位指名を受けたクマール・ロッカーは、契約合意せずにメッツには入団しないことになりました。

全体10位指名クマール・ロッカー

彼については「2021年MLBドラフト有力選手トップ10」でも紹介しましたが、21歳の右投手で今回のドラフトでも投手として全体トップ3に入る実力の持ち主でした。
実際は下馬評よりもやや低い全体10位指名となりました。

今回契約合意に至らなかった最大の要因は、ロッカーの健康状態にあるとのことです。
7月半ばにメッツが行ったドラフト後のメディカルチェックにより、彼の右腕の状態について思わしくない結果が出たとのこと。
メッツはこの結果から、ロッカーに対してオファーすらしなかったようです。

本来ドラフト指名した選手に対して球団は、その選手のスロットボーナスの40%相当のオファーをしなければならないという規定が存在します。
ロッカーの場合は全体10位指名なので474万ドルがスロットボーナスでしたが、今回メッツはそのオファーすら行っていません。
ドラフト前にMLBが行うメディカルチェックがあるのですが、ロッカーはそこに参加していなかったとのこと。
このメディカルチェックに参加するとその情報がドラフト前に全球団に公開されるため、肩、肘に不安のある彼は参加しなかったのでしょう。
そのため、事前のチェックがない状態で指名した今回の場合は、メッツはオファーを行う義務がないようです。

これによってメッツは来年のドラフト全体11位指名権を得ます。
今季のメッツは地区優勝争いをしているため、来年これほど上位の指名権を得ることはできないでしょう。
今回無理をして健康状態に不安のあるロッカーと契約するより、来年の上位指名権の方が得だと考えたわけです。
また、ロッカーの代理人はあの敏腕スコット・ボラスです。
今回の件でもボラスは「彼には現在なんの問題もない。これまで通りの投球でプロのキャリアをスタートさせることができる」と言っています。
契約金を減額して交渉するわけでもなく、そもそも交渉すらしないというのは、メッツが行ったメディカルチェックの結果はかなり悪かったのでしょうか。

過去の事例

2014年全体1位指名ブレイディ・エイケン

これと同じ問題は過去にも起こったことがあります。
2014年にアストロズから全体1位指名を受けたブレイディ・エイケンは、メディカルチェックで異常が見つかり契約合意に至らず、結局翌年にトミー・ジョン手術を受け、改めて2015年ドラフトで全体17位指名を受けてプロ入りをはたしましたが、結局まだメジャー昇格はしていません。

また、全体1位指名で破談となったため、2015年のドラフトでアストロズは全体2位指名の権利を持つことになり、そこで後のオールスター三塁手であるアレックス・ブレッグマンを獲得しました。

2012年全体8位指名マーク・アペル

2012年にパイレーツから全体8位指名を受けたマーク・アペルは、契約金で合意に至らずに入団拒否。
それによってパイレーツは翌年全体9位指名権を得て2019年のオールスター選手であるオースティン・メドウズを獲得しました。
アペルは結局翌2013年にアストロズから全体1位指名を受けますが、こちらも今までメジャー昇格できていません。

2018年全体8位指名カーター・スチュワート

2018年にブレーブスから全体8位指名を受けたカーター・スチュワートは、こちらも指名後のメディカルチェックで右手首に異常が見つかり、契約金額で折り合いがつかずに入団拒否となりました。
2019年のMLBドラフトでの指名を目指すものとみられましたが、NPBのソフトバンクホークスと6年契約で合意。
2021年には初めて一軍に昇格しています。

クマール・ロッカーの今後

上述の過去の事例のように、上位指名されて契約拒否に至った選手というのは、あまり大成していません。
なぜなら、拒否に至るのはたいていがメディカルチェックから健康状態が懸念されて契約金に納得いかないというケースだからです。
また、上述の3投手の共通点は代理人がスコット・ボラスであるということ。
今回のロッカーも代理人はボラスというのがポイントです。

ボラスは健康状態に問題はなくすぐにプロのキャリアをスタートできると主張しているため、スチュワートのように日本でプレーさせて将来的なMLB入りを目指すパターンもありえます。
ただし気になるのはスチュワートは高卒だったのに対してロッカーは大卒である点。
ボラスの目的は将来のMLB入りですから、現在21歳のロッカーにスチュワートのような6年契約をさせるというのは現実的ではありません。

いずれにせよ、本当にロッカーは投げられる状態なのか、日本に来るのか、というところで今後には非常に注目したいところです。

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