Mannyはどこにも行かない

MLB

パドレスがマニー・マチャドと契約延長することに成功しました。
今回はこの契約について話していきたいと思います。

11年契約

マチャドとパドレスは2019年から10年$300Mという契約を結んでいましたが、今回その原契約を破棄し、2023年シーズンから新たにスタートする11年$350Mという契約に合意しました。

総額$350Mというのはトラウトの12年$426.5M、ベッツの12年$365M、ジャッジの9年360Mに次ぐMLB史上4番目の規模の契約となります。

なぜこのタイミング?

マチャドの原契約10年$300Mには、2023年シーズン終了後にオプトアウト(契約破棄)する権利が盛り込まれていました。

今オフにパドレスはFAとなっていたボガーツを11年$280Mで獲得。
既にタティスやキムといった優秀なSSを擁していたパドレスが新たにスターSSを獲得したのは、2023年終了後にマチャドがFA流出した際に代わりの3Bとしてボガーツをコンバートさせる目論見があると思われていました。
そのため、マチャドがオプトアウトした場合も全力で引き止めることはないと予想されていましたが、ボガーツ獲得後もパドレスはマチャドの残留を目指すと明言。

実際に契約交渉が動いたのは2月に入ってからでした。
マチャド側がシーズンに集中するために、スプリングトレーニング開幕以前の2/16を契約延長交渉の期限として設定したものの、パドレスが正式なオファーを出してきたのはその2日前だったこと、またそのオファーが原契約+5年$105Mというものだったことが報じられました。
マチャド側が期限を設けたこと、パドレスがオファーを出したことは本人も認めましたが、そのオファーの内容については記者が本人に問いかけたところ「どこで聞いたかは知らなけど好きに書けばいい」と言われたものだったため、真偽の程はわかりません。

また、同時にマチャド自身がインタビューに対し「今季終了後にオプトアウトする。FA市場は自分が契約した当時とは様変わりしており、大金が転がっている」と発言したことで、マチャドのFA自体は避けられない状態となったはずでした。

しかしその後、マチャド側が設定した期限を過ぎた現在でも水面下では契約延長交渉が続いているという報道があり、ついに今回11年という長期の契約延長に至ったということです。

妥当な契約か?

この契約の妥当性については意見が分かれるところでしょう。
マチャドは現在30歳で7月には31歳となります。2033年に契約満了する頃には41歳になっており、衰えで契約満了と同時に引退する可能性が高いと思われます。
現在のマチャドには年平均$30M以上の価値がありますし、現状はまだ衰えの兆候も見られませんが、5年後10年後には大きく衰え不良債権化は避けられないでしょう。

しかし、これほどの契約になったのにはやむを得ない側面もあります。
デビュー直後に長期契約を結ぶ一部ケースを除けば、現在は市場の高騰によりかなり割高な契約をするのが当たり前になってきています。
30歳前後の選手に対して10年規模の長期契約を結んで球団側が得をするケースはほぼないと言っていいでしょう。つまり、不良債権化して当たり前です。
それでも特に金満球団がこぞって大型契約を連発するのは、マネーゲームに勝たなければ流出が避けられないからです。
もしもマチャドが2023年シーズン終了後にFAになれば、大谷に次ぐ超大物として争奪戦になり、メッツなどの資金力豊富な球団が参戦してくることも予想できたことから、10年$300M以上の契約になることは避けられなかったでしょう。
今回の11年$350Mを提示すればおそらくFA市場でのマネーゲームになってもパドレスが残留を勝ち取る可能性は高かったと思いますが、チーム構想を考える上では彼が今後もパドレスにいるかどうかを確実にしておいた方が有利に働きます。

また、士気という点でもマチャドの影響力の高さは見逃せません。
若い頃は悪童として名を馳せた彼も、パドレスに来てからはチームリーダーとしての優れた面が目立ちます。若いタティスの良き兄貴分としても活躍しており、数字以上の高い影響力を示してきました。
多少割高の契約であってもマチャドならば納得できる部分があると感じるパドレスファンは少なくないはず。
また、チームとしてはさらに契約延長を目指すであろうソトに対する影響力としても活用したいという打算があるかもしれません。
WBCでもチームメイトとして出場するマチャド、そして同世代のドミニカンであるタティスの存在は、ソトにとって金額以外の面での交渉材料になり得ます。

つまり、今回の契約は金額的には割高ではあり不良債権化のリスクは大いにあるものの、今のパドレスにとっては数字以上に重要な意味がある契約だ、というのが私の考えです。
不良債権化はするでしょうね。最後の5年間くらいは特に。

贅沢税への影響

今回のマチャドの契約が今季からスタートとなったことで、今季の贅沢税にも影響が出ることになります。
RosterResourceによると、マチャドの新契約後のパドレスのCBT Payroll(贅沢税対象年俸総額)は約$273.2Mとなっており、これで閾値$273Mを超過してしまったことになります。
本来パドレスはこの閾値を超過しないようにするため契約の仕方を工夫するなどしてギリギリ$272M程度で抑えていたのですが、マチャドのAAV(年平均年俸)が原契約の$30Mから新契約の$31.8Mへと切り替わったことが影響してしまいました。
$273Mの閾値を超過すると、課税額が増えるだけではなく、翌年のドラフト最上位指名権が10位降下するというペナルティを受けることになります。
CBT Payrollが計算されるのはシーズン終了時になるためまだ確定したわけでありませんが、今後選手の昇格やトレードデッドラインでの補強によっても増加するため、コンテンダーであるパドレスは高確率で$273Mを超過するでしょう。

ただ、これに関してはシーズン中の補強により避けられないことでもあったため、マチャドの再契約のせいと言い切ることもできません。遅かれ早かれこうなっていたでしょう。
逆に、ドラフト指名権降下が避けられないものと考えれば補強にも柔軟性ができたとポジティブに考えることもできます。

贅沢税について詳しく知りたい方はこちら → MLBの贅沢税計算の仕組みを解説

なりふり構わないパドレス

今回の契約延長は、パドレスが本当になりふり構わず勝ちにいきたいのだということを改めて実感する出来事になりました。
ボガーツ、ダルビッシュ、ワカに対する最近の契約からは、贅沢税に対する影響を少なくするためできるだけAAVを落としたいという意図が感じられていました。実際にダルビッシュも、自身のAAVを落としたことでマチャドとの契約延長の余地ができたであろう、という発言をしていました。

そのため本来ならマチャドに対しても原契約のAAV$30Mから落とすために年数を伸ばすタイプの贅沢税対策をとってくるものと思っていましたが、実際に結ばれた契約ではAAVが上昇しています。
パドレスにとってはAAV上昇は痛いのですが、それでもチームの顔の一人としてマチャドに残ってもらいたかったという思いが見えます。サイドラーがマチャドを最優先と発言したこともあって、オーナーの鶴の一声だったかもしれません。
ボガーツと全く同じ30歳からスタートし全く同じ11年という長さですが、ボガーツの$280Mに対してマチャドは$350Mと非常に大きな差があります。
マチャドは殿堂入りすら視野に入るほどの実績の持ち主であるという点はもちろんのこと、この4年間の彼のパドレスでの貢献を見て、チーム最大限のリスペクトを払ったのだと思います。
合理的かどうかはわかりませんが、今のパドレスがそういったリスペクトを示せるチームで良かったなと思います。

また、今オフのパドレスの締結した契約は今回の契約延長を含め総額$865Mとなりました。
サンディエゴはニューヨークやロサンゼルスとは違います。都市としては大きいですがスモールマーケットであるパドレスがこれほどの大型契約を連発することについては、コミッショナー含め他の一部オーナーも問題視している傾向にあります。
それでもサイドラーとプレラーは手を緩めるつもりはないでしょう。
目指しているのはフランチャイズ史上初のワールドシリーズ制覇。
これから数年はそれを目指してできることはなんでもするのだという意思表示が、マチャドの契約にも現れていました。

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