ナ・リーグ西地区これまでの情勢と今後の展望

MLB

昨年短縮シーズンながらワールドシリーズ制覇を果たしたロサンジェルス・ドジャース。そのドジャースが所属するナ・リーグ西地区は、今季最もレベルの高い地区と言っていいでしょう。
優勝候補と目されていたのはもちろんドジャースとパドレス。
ドジャースは昨季優勝した戦力をそのままに、さらにサイ・ヤング賞投手トレバー・バウアーを加え、先発ローテーションはMLB最強のものとなりました。
パドレスはオフにダルビッシュやスネル、マスグローブといったエース級投手を獲得し、今季勝負をかけるといった意気込みでこちらも最強クラスの先発ローテーションを築き上げました。
この2チームは開幕前のパワーランキングでもMLB1位と2位の評価を受けるなど、今季優勝の最右翼と目されていました。
ところがふたを開けてみると少し意外なチームがナ・リーグ西地区を支配。それがジャイアンツでした。
また、この3チームに後れを取って下位に沈むであろうと見られていたロッキーズとダイヤモンドバックスは案の定負け越し。それどころかダイヤモンドバックスは不名誉な連敗記録まで樹立してしまいました。
ここまでは完全な3強2弱の情勢で、2弱はともかく3強のチームがどれも他地区でなら首位でもおかしくない強さを誇っています。

それではこれまでの各チーム勝率の推移をみていきましょう。

6/24時点

SD=パドレス LAD=ドジャース SF=ジャイアンツ
ARI=ダイヤモンドバックス COL=ロッキーズ

【ジャイアンツ】
上記のグラフから見てわかる通り、現在リーグ1位なのはジャイアンツ。4月半ば頃には既に高い勝率に到達し、それ以降は勝率6割前後を維持しています。6/24時点での勝率.649はMLB全体1位です。
下馬評では最上位であったドジャースとパドレスを差し置いてジャイアンツがこれほどまでに強い要因は、予想外の打撃力でした。
チームOPS.759 チーム本塁打数111はリーグ1位、チーム得点数372位はリーグ2位を誇っています。
もちろん打力だけではここまで勝てるはずもなく、チーム防御率.322はリーグ3位と投手力も非常にハイレベル。先発防御率とリリーフ防御率の両方がリーグ3位で、特に弱点らしい弱点も見当たりません。
ジャイアンツのここまでの立役者をあげるならバスター・ポージーとケビン・ゴースマンでしょう。ジャイアンツはMVP級の選手がいるというよりは総合力で勝ちを伸ばしているチームですが、その中でもリーグ最高クラスのパフォーマンスを残しているのがこの二選手です。
フランチャイズスターであるポージーは往年の輝きを取り戻しOPS.966を記録。5月の月間MVPを獲得したゴースマンは8勝1敗 防御率1.49とサイ・ヤング賞級の活躍です。
それでも誰か一人に依存したチームではないジャイアンツは今後も高いレベルで勝率を維持している可能性が高く、主力に怪我がなければこのままドジャースとパドレスを抑えて優勝ということも十分あり得ます。

【ドジャース】
現在2位に甘んじている世界最高の戦力を持つドジャースが何故ジャイアンツを後塵を拝しているのか理由は明白。それは故障者の多さです。
現在の勝率.587はナ・リーグ東地区首位のメッツ、中地区首位のカブスよりも上ですが、それでも本来の実力はこんなものではありません。
カーショウ、バウアー、ビューラー、ウリアスからなる先発ローテーションはその名に違わぬ強力な陣容で先発防御率はリーグ2位とジャイアンツ以上の安定感を見せています。
先発投手に比べるとリリーフはやや信頼に欠けますが、それでも勝ちパターンはしっかりしていて弱点というほどでもありません。
予想外だったのはやはり野手の故障者の多さです。
投手でもローテの5番手を担うはずだったメイが5月に故障離脱し今季絶望ですが、野手では主砲のベリンジャーが開幕早々に骨折で長期離脱、5月には内野の要シーガーが死球骨折で長期離脱と主力が長く不在の状況でした。他にもリオスやポロックなど複数の野手がIL入りするなど非常に苦しい状況にあり、猫の手も借りたいということで、他チームから解雇されたプホルスや筒香を獲得。
とはいえそのような状況下でもリーグ上位の勝率を維持していたわけですから、戦力が揃えばその怖さは計り知れません。今はシーガー以外のほとんどの主力が復帰しており、ラックスやベイティといった若手にも伸びしろがあります。怪我明けの主力が調子を取り戻せば一気に連勝していくこともあり得ます。
しかし現時点では3位パドレスとの直接対決でスイープをくらい、カブスとの試合ではホームの観客の前で屈辱のノーヒッターを達成されてしまいました。
今は眠れる獅子の状態。後半からは王者の貫禄を見せてくれるのか見ものです。

【パドレス】
今オフでドジャースに次ぐ巨大戦力をそろえたと前評判が高かったパドレスはドジャースほどではありませんが何度か苦難に見舞われています。
超大型契約を結んだタティスは序盤から小さな故障離脱を繰り返し、打撃好調だったグリシャムも長期離脱しました。
最もひどかったのはチーム内で主力野手の多くが新型コロナウイルスに感染し一時かなりやりくりが厳しかった時です。
それでもチーム防御率はリーグ2位。チーム得点数はリーグ4位と攻守ともにハイレベルな数字を残しています。そして今季のパドレスの凄さは投手力や打撃力にとどまらず、その機動力にあります。盗塁数72はリーグ1位で、それも2位に25盗塁もの差をつけています。やみくもに盗塁しているわけでなく、盗塁成功率.791と高いレベルにあります。
これはただの走塁技術の高さというわけではなく、パドレスの試合をみれば伝わってくる一試合一試合をプレーオフのように戦う姿勢によるものだと私は思います。今季にかける意気込みは半端ではなく、特に対ドジャース戦では選手も観客もまるでリーグチャンピオンシップシリーズであるかのような気迫です。
そしてそのメンタリティを持ち込んでいるのはやはりタティスでしょう。レギュラーで最も若い選手ですが、彼がいるのといないのとではチームの持つ雰囲気が異なります。
リーグ1位の本塁打数を誇る彼の長打力はもちろんですが、守備でも走塁でもすべてがこの試合に勝ちたいというメンタリティにつながっていて、見ているものを熱くさせます。
だからこそ一番怖いのがタティスの故障離脱です。今季だけでも既に何度か離脱している彼は、あらゆるハッスルプレーで怪我をするのではないかという怖さも持ち合わせています。チームの戦力に関わらず、もしもタティスが今季絶望の怪我をした場合は、それはパドレスの今季絶望を意味してしまうかもしれません。
しかし、彼が健康のままシーズンを過ごせばプレーオフは十分射程圏内です。ダルビッシュ含め投手陣は実績ある投手揃いですから、あとはもう少し攻撃力が安定すればリーグ優勝もまだまだ狙えると思います。

【ロッキーズ】
オフに攻守ともにスターであったアレナドを失いました。これはアレナド自身のロッキーズに対する見切りで、彼の放出はすなわち完全な再建期にはいることを意味します
今季強力な陣容を誇る3チームには到底かなわないことは開幕前からわかっており、ロッキーズの低迷は下馬評通りのものでした。
ロッキーズと言えば打者有利の本拠地を活かした攻撃重視のチームですが、投手力は例年通り最低クラスで、唯一救いであった打撃でもリーグ中位クラスといいところがありません。
若手有望株であふれているわけでもありませんし、オールスター級選手だったトレバー・ストーリーはなかなか調子が上がらず価値を落としています。
あまりにも弱いダイヤモンドバックスのおかげであまり目立たずにすんでいますが、これはもう暗黒時代という他ないでしょう。
今季の目標は若手育成と勝率4割維持になりそうです。

【ダイヤモンドバックス】
悪い意味で大きな話題になったダイヤモンドバックス。
バンガーナーが7回参考記録ながらノーヒッターを達成し、捕手のカーソン・ケリーが序盤オールスター級の活躍をするなど、決して悪いことばかりではありませんでした。
しかしアウェイでの23連敗という不名誉な記録を樹立し、先日はケリーが死球で手首骨折と泣きっ面に蜂の最悪の状況。
6/21のブルワーズに勝利したことで6/2から始まった連敗自体は17で止めることができました。それでも明日からはまた悪夢のアウェイが始まります。しかも相手は連勝中のパドレス。まだ不名誉な記録は続きそうです。
ダイヤモンドバックスの最大の問題は投手陣にあり、特にチーム防御率はリーグワーストで、それもリーグ唯一の5点台です。その最大の要因は先発投手で、ギャレンとワイドナー以外は壊滅状態と言っても過言ではありませんが、その二人も故障で離脱しており、エースのギャレンは最近ようやく戻ってきたばかりです。
とにかくまずはアウェイでの連敗をとめることが先決ですが、前半戦でここまで酷いありさまではもう今季は最下位は免れないかもしれませんね。

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