2022年シーズン開幕時にプロスペクトランキングトップ100に入っていたトッププロスペクトたちが今どんな立ち位置になっているのかを振り返ります。
開幕時のランキングと現在の比較
RANK | PLAYER | POSITION | TEAM | NOW | ROY |
1 | ボビー・ウィットJr. | SS | KC | MLB | AL4 |
2 | アドリー・ラッチマン | C | BAL | MLB | AL2 |
3 | フリオ・ロドリゲス | OF | SEA | MLB | AL1 |
4 | スペンサー・トーケルソン | 1B | DET | MLB | |
5 | ライリー・グリーン | OF | DET | MLB | |
6 | グレイソン・ロドリゲス | P | BAL | 4 | |
7 | ガブリエル・モレノ | C | TOR/ARI | MLB | |
8 | アンソニー・ボルピー | SS | NYY | 5 | |
9 | CJ・エイブラムス | SS | SD/WSH | MLB | |
10 | フランシスコ・アルバレス | C | NYM | 1 | |
11 | ノエルヴィ・マルテ | SS | SEA/CIN | 17 | |
12 | シェーン・バズ | P | TB | MLB | |
13 | マルコ・ルシアーノ | SS | SF | 16 | |
14 | マルセロ・マイヤー | SS | BOS | 7 | |
15 | ブレナン・デイビス | OF | CHC | 48 | |
16 | トリストン・カサス | 1B | BOS | 25 | |
17 | ジャック・ライター | P | TEX | 45 | |
18 | アレック・トーマス | OF | ARI | MLB | |
19 | コルビン・キャロル | OF | ARI | 3 | |
20 | ニック・ゴンザレス | 2B | PIT | 93 | |
21 | リード・デトマース | P | LAA | MLB | |
22 | ハンター・グリーン | P | CIN | MLB | |
23 | ジョーダン・ロウラー | SS | ARI | 12 | |
24 | ヘンリー・デイビス | C | PIT | 19 | |
25 | カリル・ワトソン | SS | MIA | – | |
26 | オニール・クルーズ | SS | PIT | MLB | NL6 |
27 | ブレット・ベイティ | 3B | NYM | 18 | |
28 | ディエゴ・カルタヤ | C | LAD | 8 | |
29 | ジョシュ・ヤン | 3B | TEX | 36 | |
30 | ジョーダン・ウォーカー | 3B | STL | 6 | |
31 | ジョーイ・バート | C | SF | MLB | |
32 | ジョージ・カービィ | P | SEA | MLB | AL6 |
33 | ノーラン・ゴーマン | 2B | STL | MLB | |
34 | エドワード・カブレラ | P | MIA | MLB | |
35 | マックス・マイヤー | P | MIA | 43 | |
36 | ザック・ヴィーン | OF | COL | 23 | |
37 | ロバート・ハッセル | OF | SD/WSH | 22 | |
38 | オレルヴィス・マルティネス | SS | TOR | 70 | |
39 | ケイド・カバーリ | P | WSH | 55 | |
40 | ジャクソン・ジョーブ | P | DET | 38 | |
41 | エウリー・ペレス | P | MIA | 9 | |
42 | ニック・ロドロ | P | CIN | MLB | NL6 |
43 | マシュー・リベラトーア | P | STL | 80 | |
44 | ルイス・カンプサーノ | C | SD | MLB | |
45 | ブライソン・ストット | SS | PHI | MLB | |
46 | ロイス・ルイス | SS | MIN | 58 | |
47 | ジョージ・バレラ | OF | CLE | 31 | |
48 | コール・ウィン | P | TEX | – | |
49 | ブレイディ・ハウス | SS | WSH | – | |
50 | ジョシュ・ロウ | OF | TB | MLB | |
51 | MJ・メレンデス | C | KC | MLB | |
52 | オースティン・マーティン | OF | MIN | – | |
53 | ダニエル・エスピノ | P | CLE | 15 | |
54 | クイン・プリースター | P | PIT | 44 | |
55 | ニック・ヨーク | 2B | BOS | – | |
56 | タイラー・ソダーストロム | C | OAK | 47 | |
57 | ボビー・ミラー | P | LAD | 26 | |
58 | シクスト・サンチェス | P | MIA | – | |
59 | シェイ・ランゲリアーズ | C | OAK | MLB | |
60 | オズワルド・ペラザ | SS | NYY | 50 | |
61 | ジェイソン・ドミンゲス | OF | NYY | 39 | |
62 | ニック・プラット | 1B | KC | MLB | |
63 | ルイス・マトス | OF | SF | – | |
64 | ガナー・ヘンダーソン | SS | BAL | 2 | |
65 | マイケル・ハリス | OF | ATL | MLB | NL1 |
66 | コルトン・カウザー | OF | BAL | 40 | |
67 | マイケル・ブッシュ | P | LAD | 42 | |
68 | アンディ・パエズ | OF | LAD | 66 | |
69 | JJ・ブレデイ | OF | MIA | MLB | |
70 | サル・フレリック | OF | MIL | 46 | |
71 | ロアンシー・コントレラス | P | PIT | MLB | |
72 | エイサ・レイシー | P | KC | – | |
73 | ガブリエル・アリアス | INF | CLE | MLB | |
74 | タージ・ブラッドリー | P | TB | 20 | |
75 | カイル・ハリソン | P | SF | 21 | |
76 | エリー・デラクルーズ | 3B | CIN | 14 | |
77 | ビダル・ブルーハン | OF | TB | MLB | |
78 | ロニー・マウリシオ | SS | NYM | – | |
79 | リオバー・ペゲーロ | SS | PIT | 62 | |
80 | ジョーダン・グローシャンズ | SS | TOR/MIA | – | |
81 | ミック・アベル | P | PHI | 54 | |
82 | エメルソン・ハンコック | P | SEA | – | |
83 | エズキエル・デュラン | INF | TEX | MLB | |
84 | ブライアン・ロッチョ | INF | CLE | 69 | |
85 | ジャレン・デュラン | OF | BOS | MLB | |
86 | マッケンジー・ゴア | P | SD/WSH | MLB | |
87 | マット・マクレイン | SS | CIN | 73 | |
88 | タイラー・フリーマン | INF | CLE | MLB | |
89 | ジャスティン・フォスキュー | 2B | TEX | 78 | |
90 | DJ・ホール | P | BAL | 87 | |
91 | グレッグ・ジョーンズ | SS | TB | – | |
92 | クリスチャン・ヘルナンデス | SS | CHC | – | |
93 | ハリー・フォード | C | SEA | 65 | |
94 | ミゲル・バルガス | 3B | LAD | 41 | |
95 | ホセ・ミランダ | 3B | MIN | MLB | |
96 | オースティン・ウェルズ | C | NYY | 82 | |
97 | ジョー・ライアン | P | MIN | MLB | |
98 | マット・ブラッシュ | P | SEA | MLB | |
99 | ブレイク・ウォルストン | P | ARI | – | |
100 | ジョーイ・ウィーマー | OF | MIL | 84 |
*”ROY”は新人王投票の結果
2022年シーズン開幕時のMLB Pipelineのプロスペクトランキングトップ100は上表の通り。
今季からこのプロスペクトランキングはこれまで以上に大きな意味を持つものになりました。Prospect Promotion Incentive (PPI) プログラムと呼ばれる制度が導入されたからです。
PPIプログラムは実力のあるトッププロスペクトを開幕時点でメジャー昇格させることにメリットをもたせるため、対象となる選手が条件を満たした場合に所属チームが追加のドラフト指名権を得ることができるというものです。
この対象となる選手の一つの条件が、”開幕前に発表される3つの媒体(MLB Pipeline, Baseball America, ESPN)のプロスペクトランキング100のうち2つにランクインしている”、というものなのです。
この新しいプログラム導入により昨年は数多くのトッププロスペクトが開幕からメジャーロースター入りすることになり、今回見事に条件を満たしたフリオ・ロドリゲス擁するマリナーズは2023年に追加のドラフト指名権を得ました。
今回は、この重要な意味を持つようになったプロスペクトランキングの中から、特に大きく評価を上げた選手と下げた選手をそれぞれピックアップして紹介します。
大きく評価を上げたプロスペクト
ガナー・ヘンダーソン(BAL)
LEVEL | G | AVG | OBP | SLG | HR | SB |
MLB | 34 | .259 | .348 | .440 | 4 | 1 |
AAA | 60 | .288 | .390 | .504 | 11 | 10 |
AA | 47 | .312 | .452 | .573 | 8 | 12 |
開幕時 64位 → 現在 2位
昨年最も出世したプロスペクトの1人。
2019年のドラフトでは全体42位指名で、全体1位捕手ラッチマンの陰に隠れながら徐々に評価を上げ、今季は8/31に21歳の若さでメジャーデビューを果たしました。
シーズン終盤の昇格は翌年のためのお試し昇格のためメジャーの壁にあたることが多いのですが、ヘンダーソンは約一ヶ月でfWAR0.8を稼ぐ活躍を見せてくれました。
AAとAAAの2つのカテゴリにおける活躍ぶりも見事で、MLB Pipelineによりプロスペクトの年間最優秀打者にも選ばれています。
当然2023年のAL新人王最有力候補です。
コルビン・キャロル(ARI)
LEVEL | G | AVG | OBP | SLG | HR | SB |
MLB | 32 | .260 | .330 | .500 | 4 | 2 |
AAA | 33 | .287 | .408 | .535 | 7 | 11 |
AA | 58 | .313 | .430 | .643 | 16 | 20 |
ROK | 2 | .500 | .625 | 1.000 | 1 | 0 |
開幕時 19位 → 現在 3位
順位の上げ幅自体はそれほどでもないものの、媒体によっては全体1位に挙げられているキャロル。
2019年に全体16位指名を受け、当時の高校生の中では最高の打者であり最高のアスリートと評されました。
デビューしてからこれまで壁らしい壁にあたっておらず、どのカテゴリでも期待を裏切らぬ活躍を見せてきました。
22歳になったばかりの8/29にメジャーデビューすると、走攻守全てでハイレベルなパフォーマンスを発揮しなんとたった一ヶ月でfWAR1.4を叩き出しました。
2023年はNL新人王の最有力候補ですが、特に高い評価を受けている俊足を活かしていきなり盗塁王のタイトルをとってしまうかもしれません。
エリー・デラクルーズ(CIN)
LEVEL | G | AVG | OBP | SLG | HR | SB |
AA | 47 | .305 | .357 | .553 | 8 | 19 |
A+ | 73 | .302 | .359 | .609 | 20 | 28 |
開幕時 76位 → 現在 14位
プロスペクトを追いかけているファンから今最も期待されている選手の一人がこのデラクルーズ。
ドミニカからレッズへと入団した頃にはまだそこまで名の知れた存在ではありませんでしたが、5ツールプレーヤーとしてここ2年程で急速に名を上げています。
195cmという巨躯に加えて高い身体能力を有しており、今は主にSSを守っていますがレッズのプロスペクトに内野手が多い事情もあって将来的には3BかOFに転向する可能性もあります。
三振の多さなどまだ粗削りではありますがスケールの大きさはジャッジ級。
まだAAまでしか経験していませんが、順調にいけば2023年中にメジャーデビューの可能性があります。
エウリー・ペレス(MIA)
LEVEL | G | ERA | IP | K | BB | HR |
AA | 17 | 4.08 | 75.0 | 106 | 25 | 9 |
A | 1 | 0.00 | 2.0 | 4 | 0 | 0 |
開幕時 41位 → 現在 9位
若手投手王国と化したマーリンズの次なる矢になりそうなのが長身ドミニカンのペレス。
2019年にドミニカからマーリンズへ入団した頃から10cm伸び、現在の身長はMLBでは数少ない2m超えの203cm。
スカウトされた当時はまだ80mph半ばだった速球の球速は年々上がり現在最速98mphに到達するほどに。
速球だけではなくハイレベルなチェンジアップやカーブも持っており、マイナーではこの2年三振の山を築いてきました。
マーリンズには同郷の偉大な先輩アルカンタラがおり、彼も長身という共通点を持っているため、成長著しいペレスがメジャーデビューした暁にはアルカンタラからいい部分を吸収して、またしてもサイ・ヤング賞をとるドミニカンになるかもしれません。
タージ・ブラッドリー(TB)
LEVEL | G | ERA | IP | K | BB | HR |
AAA | 12 | 3.66 | 59.0 | 53 | 15 | 10 |
AA | 16 | 1.70 | 74.1 | 88 | 18 | 4 |
開幕時 74位 → 現在 20位
好投手を次々輩出するレイズの次なる刺客。
2018年のドラフトでは全体150位とまだそれほど評価が高くありませんでしたが、2020年のパンデミックシーズンに生活習慣を改善するなど身体づくりをした結果一変。
2021年にはAとA+の二つのカテゴリでともに防御率1点台を記録するなど一気に好投手へと進化しました。
2022年はAAではほぼ敵なしだったもののAAAに昇格後はやや苦しんだ印象がありますが、2023年中のデビューはほぼ間違いないでしょう。
大きく評価を下げたプロスペクト
ニック・ゴンザレス(PIT)
LEVEL | G | AVG | OBP | SLG | HR | SB |
AA | 71 | .263 | .383 | .429 | 7 | 5 |
A | 1 | .000 | .250 | .000 | 0 | 0 |
ROK | 2 | .429 | .429 | .857 | 0 | 1 |
開幕時 20位 → 現在 93位
2020年に全体7位の高評価でパイレーツ入りし、プロデビュー一年目は怪我がありながらもセンセーショナルな打撃パフォーマンスで大きく期待されていました。
打率3割を残すようなエリートヒッターになるかと思われていましたが、怪我のせいか思ったのとは少し違うタイプに。
2022年も打撃面で非凡さは魅せたものの、とにかく怪我の多さともう23歳ながらまだAAで突き抜けられずにいるのが評価を落とした要因に。
カリル・ワトソン(MIA)
LEVEL | G | AVG | OBP | SLG | HR | SB |
A | 83 | .231 | .296 | .395 | 9 | 16 |
ROK | 5 | .273 | .500 | .727 | 1 | 0 |
開幕時 25位 → 現在 圏外
19歳のワトソンが評価を落とした理由は成績を見れば一目瞭然。
2021年に全体16位でマーリンズに入団したワトソンはドラフト前はあるいは全体1位もあり得るかと言われたSSでした。
プロ入り後初のフルシーズンとなった2022年はAでOPS.691という惨憺たる出来になりました。
何よりも致命的だったのが三振率35.5%という数字を出した選球眼とコンタクトの悪さでした。
アスリートタイプで身体能力には優れているものの、フルシーズン一年目でいきなりこの大ブレーキでは評価を落とすのも無理はありません。
現在の彼はマーリンズの球団内ランキングで7位にまで落ちていますが、2023年もこの打撃が改善されないようだと早くも厳しい立場になりそうです。
オースティン・マーティン(MIN)
LEVEL | G | AVG | OBP | SLG | HR | SB |
AA | 90 | .241 | .367 | .315 | 2 | 34 |
ROK | 2 | .250 | .400 | .375 | 0 | 1 |
開幕時 52位 → 現在 圏外
見るたびに評価を落としているマーティン。
2020年にベストヒッターの一人として全体5位指名を受けブルージェイズ入り。
2021年にいきなりAAからデビューすると極めて高い出塁能力を見せつけ、トレードデッドラインではベリオスのトレードの主要なプロスペクトとしてツインズへ移籍。
しかし2年目となった2022年は同じAAでもパフォーマンスが低下し、なおかつパワーの無さが最大の問題に。
フィジカル面が弱くパワーと送球の評価が低いことと、最大の強みであったコンタクトで思ったほどの成績を出せていないことから現在はツインズの球団内ランキングで12位まで低下しています。
23歳ということもあって、将来像は控えのユーティリティかもしれません。
エイサ・レイシー(KC)
LEVEL | G | ERA | IP | K | BB | HR |
AA | 11 | 11.25 | 20.0 | 25 | 28 | 2 |
ROK | 4 | 9.00 | 8.0 | 10 | 14 | 1 |
開幕時 72位 → 現在 圏外
数字を見ればそれ以上説明する必要もないかもしれません。
上述のゴンザレス、マーティンらと同じ2020年ドラフト組で、左腕としては最上位の全体4位でロイヤルズに入団しました。
プロデビューした2021年は制球難に苦しみながら7月に肩の故障でシーズン終了。
2022年は今度は背中の故障に苦しみ、その結果制球はさらに悪化し三振よりも四球が多い状態に。
ただでさえ制球難を抱えているところに故障も重なる二重苦によって彼の将来像は不透明になってきました。
現在の評価はロイヤルズの球団内ランキングで10位ですが、今後制球難が改善されなければ30位以内から外れてもおかしくありません。