今MLBを賑わせているホットな話題は三人のJr.や二刀流大谷、そして異次元の投球をしているデグロームですが、悪い意味でホットになっているのが「粘着物質の取り締まり強化」です。
これ自体は不正を取り締まるという意味でいいことのはずなのですが、選手からは不満が噴出しており、さらに現地時間6/22の試合ではある種のトラブルまで起きてしまいました。
問題が起こったのはナショナルズ対フィリーズの試合。
前日から始まっていた試合前とイニング間の粘着物質の検査は、もちろんこの日も行われていました。しかし、審判はイニング中であっても怪しい場合は検査することができます。
この試合の4回裏、フィリーズのジラルディ監督は審判に対して相手投手のマックス・シャーザーを検査するように要求。シャーザーはこの日すでに既定のプロトコルに従い初回と3回の終了後に審判による検査を受けており、その際も帽子、グローブ、手からは何も発見されませんでした。
しかし、このジラルディの要求で本日3度目の検査となったシャーザーは憤慨し、審判団が近づくとグローブと帽子を投げ捨て、さらに何もないことを証明しようとベルトまで外そうとしました。
結果的には何も禁止物質が見つからず、苦しみながらもこの回を無失点におさえたシャーザーはベンチに戻るまでずっとジラルディをにらみ続け、ベンチに戻ってからはジラルディを煽るように帽子やグローブを見せつけます。今度はこれに激高したジラルディがヒートアップし、ベンチを出て怒鳴りつけているところを審判に止められ、早々に退場処分を受けるという結末になりました。
ジラルディの検査要求が駆け引きだったのかどうかはわかりませんが、フィリーズは2対3で敗れたため、これはあまりうまくいかなかったことになります。
この騒動について両者は下記のようにコメントしています。
シャーザー:「これほどみんなが見張っているような今日の試合で何かを使うような馬鹿じゃない。私は感情的にはなったわけじゃなく、本当に何もないということを証明したかった。そのためには全部脱いだって良かった」
ジラルディ:「シャーザーはいずれ殿堂入りするような好投手で、2010年以来彼を見てきたが、今夜のように髪を撫でつける動作は見たことがない。彼はそれを4回ほどやったので、怪しく感じた。別に悪意があったわけじゃない」
ジラルディは、シャーザーが何度も髪の毛に指を通すような仕草をしていたことに不信感を覚えたために、審判団に検査を要求したということのようです。
検査の結果髪の毛には汗以外の何も発見されなかったということですが、シャーザーはそれ以外にも手をなめたりという仕草もしており、おそらく汗で滑りやすいボールをなんとかしようとしていたのではないでしょうか。
私自身10年以上MLBファンをやっていますが、今回のような騒動が起こるのは本当にばかげていると感じます。
ダルビッシュがTwitterでパドレスとレッズの選手にNPB公式球を見せたら好評だったというエピソードを投稿していました。
この粘着物質問題ももとをただせば滑りやすいMLB公式球に行きつきます。取り締まるよりも先にボールをなんとかすべきというのはダルビッシュの言でしたが、これは本当にその通りだと思います。
ボールを改善すればさらに投高打低が進んでしまいそうなので容易にはできないというのも理解できます。
リーグの平均打率.236は史上最も低い数値であり、今季のノーヒッター連発もそこに起因していると考えるのであれば、やはりもう少し打高にもっていかなければスポーツとしての魅力が半減してしまう。
一方で、MLBは試合の高速化を望んでいたはず。この日のシャーザーのようにイニング中に検査が始まるようであれば、今以上に遅々とした試合進行になるのは間違いないでしょう。
難問ではありますが、野球人気回復のためにもここでうまく解決しなければ、状況は悪化してしまいかねません。
とにかく、今季はこのルールで動くことになると思いますが、相手投手を動揺させる目的で検査要求を濫用する監督が出ないことを祈ります。