Beat LA 2022

Beat LA MLB

熱い試合が続く2022年のポストシーズン。
その中でも特に熱い(と勝手に思っている)のが私の愛するパドレスです。
今回、NLDSでパドレスは天敵ドジャースを破るという快挙を成し遂げてくれましたので、それについて少し掘り下げていこうと思います。

パドレスとドジャース

ドジャースのライバルと言うとジャイアンツの名前がよくあげられますが、この二つの関係ほど深くはないもののパドレスも実はライバル関係にあります。いえ、パドレスがライバル視していると言ったほうが適切かもしれません。
とは言ってもその戦績はパドレスにとって芳しいものではありません。毎年のように地区優勝を勝ち取る巨大戦力を持つドジャースに、パドレスは長い間苦しめられてきました。

2020NLDS

そんなパドレスとドジャースが初めてポストシーズンで対戦したのは意外なことに2020年と最近のこと。
ご存じの通り2020年はコロナ禍に伴う短縮シーズンで、パドレスは地区優勝こそドジャースに奪われたものの、ワイルドカードでポストシーズン進出を果たしました。
ワイルドカードシリーズでカージナルスを下したのち、NLDSで相対したドジャースにはスイープで敗れます。
つまりパドレスは、ポストシーズンでドジャース相手に1勝もできなかったわけです。

レギュラーシーズンの戦績

パドレスがドジャースに勝てないのはポストシーズンだけではありません。
レギュラーシーズンでも常にドジャースに圧倒されています。

直近10年間のレギュラーシーズン戦績を見てみましょう。

Yearパドレスドジャース
2013813
2014712
2015514
2016811
2017613
2018514
2019613
202046
2021712
2022514
Total61122

上表をご覧の通り、この10年間パドレスは勝ち越しどころか10勝したシーズンすらなく、その勝率はわずか.333と野球にあるまじき負けっぷりです。
この結果でライバルを名乗るのですから、鼻で笑われても仕方ありません。
ご多分に漏れず今季も5勝14敗と大きく負け越しており、シリーズは6度ありましたが全て負け越してしまいました。
そのため、3勝した方が勝ち抜けというNLDSでパドレスが勝ち抜けると思っていたファンや識者は、パドレス関係者くらいしかいなかったのかもしれません。

NLDS

球団新記録となるシーズン111勝をあげた史上最強クラスのドジャースは、当然ナ・リーグの第一シードとなりました。
つまり、ワイルドカード1位と2位が戦うワイルドカードシリーズを勝ち抜いたチームがドジャースと相対するということです。

上記戦績からワイルドカード2位になることは避けたかったパドレスですが、終盤にフィリーズが失速したこともあって一番厳しい2位に入ってしまいました。
ワイルドカード1位のメッツは101勝、そこをクリアしても次は111勝のドジャースが待ち構えるという最悪の山です。
多くの識者がパドレスの敗退を予想する中、ワイルドカードシリーズは勝利の女神エマ・ストーンが降臨したこともあり見事2勝1敗でメッツを下しました。
そして、NLDSでドジャースと対決することが決まったことで、パドレスファンの心はみな”Beat LA”で一つにまとまったのです。

Beat LA

そもそも”Beat LA”という標語は、1982年にNBAにおいて、”レイカーズを倒せ”という意味合いから生まれたものです。
NBAにおいてこのLAはたいていレイカーズを意味しますが、MLBにおいてはドジャースです。
直近では2018年ワールドシリーズのレッドソックス対ドジャースにおいて”Beat LA”で盛り上がりました。

パドレスとしては、絶望的に戦績の悪いドジャースと当たることになった以上、もはや”Beat LA”を成功させるしかないわけです。
パドレスにとってはこれがある意味ワールドシリーズ以上の難所。
そして今回見事そこを突破してくれました。

Game 1
123456789R
パドレス0000300003
ドジャース203000005
W : ウリアス L : クレビンジャー S : マーティン

NLWCがGame 3までもつれた影響で、パドレスの先発は好調とは言い難いクレビンジャー。
対するドジャースの先発は今季最優秀防御率のウリアス。
惨敗を予想できたこのマッチアップは案の定クレビンジャーが3回途中5失点。
しかしその後の展開は少し意外なもので、パドレスのブルペンがドジャースに得点どころか安打すら許さず、5回には2点差まで追い上げるなどその後に希望をもたせるものでした。

Game 2
123456789R
パドレス1020010105
ドジャース1110000003
W : ダルビッシュ L : グラテロル S : ヘイダー

初戦を落としたため後は三本柱で3連勝といきたいパドレスは、エースのダルビッシュを送り出します。
ダルビッシュにとっては2017年のワールドシリーズで炎上して以来のドジャー・スタジアムでのポストシーズンのマウンド。
初回から3イニング連続でソロを被弾するなど少々不安な出来もなんとか大量失点は免れていました。
転機となったのは6回。
ここまで打撃絶好調だったターナーのエラーにつけ込んだパドレスが勝ち越しの4点目を奪うと、その裏ダルビッシュが招いた大ピンチをスアレスが完璧なリリーフで火消ししてくれます。
その後もパドレスブルペンはドジャース打線を封じ込め、ポストシーズンで球団史上初めてとなるドジャースからの1勝をあげました。

Game 3
123456789R
ドジャース0000100001
パドレス100100002
W : スネル L : ゴンソリン S : ヘイダー

サンディエゴへと舞台を移したNLDSは、2006年以来のペトコ・パークでのポストシーズン。
先発したスネルは序盤から相変わらずの球数多めながら、6回途中1失点でまとめてリードを守りきりました。
打線の方は初回にいきなりクロネンワースが先制打を放ち、4回にはNLWCで大活躍だったグリシャムがソロで追加点。
結局これ以上点は入らず絶好調のパドレスブルペンが1点差を最後まで守り抜きました。
さらにこれは1998年以来のサンディエゴでのポストシーズン勝利であり、記念すべき1勝になりました。

Game 4
123456789R
ドジャース0020001003
パドレス000000505
W : ヒル L : アルモンテ S : ヘイダー

1敗してもまだ望みがあるとはいえ、ここで負ければ最終戦はドジャー・スタジアム。
なんとかして本拠地ペトコ・パークで決めたいパドレスは、ダルビッシュと並ぶ右のエース、マスグローブを先発させます。彼はメッツとのNLWCで最終戦に先発し、敵将に粘着物質を疑われるトラブルがありながらも7回1安打無失点という素晴らしいパフォーマンスを見せていました。
彼は地元サンディエゴ出身でパドレスファンであり、パドレスに入団する前からパドレスタトゥーを彫っていたほどの筋金入り。この日は自身の憧れの投手であったジェイク・ピーヴィが始球式に登場し、マスグローブが活躍する流れが完全にできていました。

マスグローブは序盤から球数を多く使いながらも、3回フリーマンに2点二塁打で先制を許した以外は崩れず6回2失点とドジャース相手であることを考えると十分な好投。しかし誤算だったのが打線で、ドジャース先発アンダーソン相手に完全に打ちあぐねていました。そればかりかマスグローブのあとを受けたウィルソンが7回ノーアウト満塁のピンチを作り犠牲フライで1点を失います。続くヒルがそれ以上の失点を防いだものの、7回時点で3点というのはあまりにも大きな点差でした。

しかし7回裏、おそらく今後パドレスファンに語り継がれるであろうビッグイニングが訪れます。

このつないでつないでの5得点の逆転により流れはパドレスのものに。
その後大雨が降り始めたものの、スアレス、ヘイダーの盤石のリレーはこれをものともせず、パドレスのNLCS進出が決定しました。

新たなアイコン

このシリーズ、一種の象徴になったものがあります。
Game 2の試合途中、突然雁がフィールドに現れたのです。

SNSなどではキンブレルの怨念などと茶化されたこの雁ですが、この試合に勝利したことから早速パドレスの勝利のアイコンと化します。

この雁は”Rally Goose”と名付けられ、多くのファンの手によって応援アイテムになりました。
“Rally Goose”がフィールドに舞い降りてからパドレスはまだ無敗です。

シリーズMVP

WS、LCSとは異なり、DSにはシリーズMVPの受賞はありません。
そのため、今回は私が思うMVPを勝手に選びます。

ロベルト・スアレス

本当はこのシリーズたったの1失点しかしなかったブルペン全体が素晴らしいと思うのですが、勝ち試合全てに登板したスアレスとヘイダーは別格でした。その中でも特にスアレスの活躍には目をみはるものがありました。

Game 2ではダルビッシュが残したノーアウト1, 3塁という絶望的な状況でマウンドに上がり無失点で切り抜けたばかりか、その次の回も投げきりました。
Game 3では1点差の8回に登板し、ここでも無失点でヘイダーにつなぎました。
Game 4では逆転した直後の8回、それも大雨の中簡単に3者凡退に切って取りました。

特にGame 2のあのピンチをスアレスが切り抜けなければ、スイープということも十分ありえたかもしれません。
それくらい重要な役どころで大活躍してくれた彼は、このディビジョンシリーズのMVPといって差し支えないでしょう。

NLCSはワイルドカード対決

パドレスは一足先に進出を決めていたフィリーズとNLCSで対戦することになります。
フィリーズはNLWC初戦で最終回に6点奪い逆転勝利するとその勢いのままカージナルスをスイープ。さらに101勝で同じ東地区で優勝したブレーブスを相手に3勝1敗で勝ち切る強さがあります。
また、これによりナ・リーグは地区優勝チームが消えワイルドカード同士の対決になります。

この2チームはどっちが強いかとかはもうよくわかりません。
パドレスがワイルドカード2位、フィリーズが3位ということで本来ならばこの2チームがナ・リーグのポストシーズン最弱だったはずですが、現実はそれぞれ100勝チームを倒してNLCSまでたどり着きました。
勢いのある方が勝つでしょうが、実はレギュラーシーズンからの因縁もあります。
6月に対戦した際スネルがハーパーに死球を与えてしまい、ハーパーはこのときの骨折が原因で長期離脱を強いられました。
ハーパーとスネルが対峙するであろうGame 2は必見です。

そしてこのNLCSには勝敗の他に興味深いことが一つ。
パドレスには捕手のオースティン・ノラ、フィリーズには投手のアーロン・ノラがいますが、彼らは兄弟です。
兄のオースティンも弟のアーロンも二人とも絶好調であり、彼らの直接対決も一つの見どころとなりそうです。

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