2021年ワールドシリーズは、アトランタ・ブレーブスがヒューストン・アストロズを4勝2敗で下し、26年ぶり4度目のワールドシリーズ制覇を成し遂げたことで幕を閉じました。
今回は、その全6試合を振り返りたいと思います。
2021年ワールドシリーズ振り返り
第1戦 ミニッツメイドパーク
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ブレーブス | 2 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 6 | 12 | 1 |
アストロズ | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 8 | 1 |
レギュラーシーズンの勝率で上回っていたアストロズの本拠地で幕を開けた第1戦は、ブレーブスが6-2で勝利を収めました。
ブレーブス先発投手:チャーリー・モートン
アストロズ先発投手:フランバー・バルデス
ブレーブスは今季のポストシーズンのほとんどの試合でモートン、マックス・フリード、イアン・アンダーソンの3投手を先発させてきました。
頂上決戦となるワールドシリーズでもその方針を貫き、初戦をベテランのモートンに任せました。
一方のアストロズは直近のレッドソックス戦で8回1失点の好投を見せたバルデスを起用。
試合は終始ブレーブスが主導権を握る展開になりました。
初回先頭打者のホルヘ・ソレアが本塁打を放ち先制すると、この回オースティン・ライリーの二塁打でさらに1点を加えます。
2回、3回にもさらに点を追加し、3回までで5-0の大差となりました。
しかし、3回裏の守備でアクシデントが発生。
ここまで無失点だったモートンが2回に脛に打球を受けて骨折していたことで、3回途中で降板。
ブレーブスは想定外の継投を強いられましたが、序盤の大量リードは大きく、まずはブレーブスが先勝しました。
敵地で初戦を制したことは非常に大きいものの、その代償として3本柱の一角モートンを負傷交代という形で失うことになり。ブレーブスは先発ローテーションに手を加える必要がでてきました。
第2戦 ミニッツメイドパーク
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ブレーブス | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 7 | 2 |
アストロズ | 1 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | X | 7 | 9 | 0 |
初戦を落としてしまったアストロズが7-2で勝利をおさめ、敵地に向かう前にスコアをタイに戻しました。
ブレーブス先発投手:マックス・フリード
アストロズ先発投手:ホゼ・ユーキディ
ブレーブスは予定通り左のエースであるフリードを先発させ、アストロズはALCSで1.2回6失点(5自責点)と炎上したユーキディを起用しました。
試合は連敗は避けたいアストロズの打線が序盤を火を噴き、前日とは対照的にアストロズ優位な展開になりました。
1回表にピンチを作りながらもユーキディが0に抑えると、その裏にアストロズがアレックス・ブレグマンの犠牲フライで1点を先制。
2回にトラビス・ダナウドのソロ本塁打で同点になるものの、その裏にアストロズが4連打を含む5本のシングルヒットで4点を奪い、5-1でアストロズが大きくリードします。
その後フリードは立ち直ったものの、ブレーブス打線はユーキディを打ち崩すことができずに、最終的に7-2でアストロズが勝利。
本拠地で連敗だけは避けたかったアストロズにとっては、フリードを打ち崩しての勝利は大きなものになりました。
第3戦 トゥルーイストパーク
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アストロズ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 |
ブレーブス | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | X | 2 | 6 | 1 |
本拠地へ戻ってきたブレーブスが強力な投手陣でアストロズをシャットアウトし、2-0でロースコアなゲームを制しました。
アストロズ先発投手:ルイス・ガルシア
ブレーブス先発投手:イアン・アンダーソン
両チームともに新人王レースに顔を出した若い投手を先発起用しました。
ワールドシリーズで新人先発投手が対決するのは2006年のジャスティン・バーランダーとアンソニー・レイエス以来の出来事。
ガルシアの直近のALCSで5.2回無失点の好投、アンダーソンはそれまで登板した今ポストシーズン3試合で防御率2.25の活躍を見せていました。
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初回は両投手やや荒れた立ち上がりでしたが、ピンチを招きながらも両投手が好投。
試合が動いたのは3回。
ブレーブスが1アウト1,2塁のチャンスをつくると、ライリーの二塁打で先制。
未だノーヒットピッチングを続けるアンダーソンに対して、アストロズは4回途中から継投に入ります。
しかしアンダーソンは4四死球を与えながらもヒットを許さず、結局アストロズを5回ノーヒットノーランに抑えこみます。
5回76と球数には多少の余裕があったアンダーソンですが、ブレーブスはノーヒットのまま継投を決断。
8回にタイラー・マツェックがアレドミス・ディアスにシングルヒットを許しノーヒットノーラン達成はならなかったものの、8回裏には追加点もあげ2-0でブレーブスが完封勝利を収めました。
本拠地での初戦であわやノーヒットノーランという素晴らしい試合をみせ、ブレーブスが2勝1敗でシリーズをリードしました。
第4戦 トゥルーイストパーク
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アストロズ | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 8 | 0 |
ブレーブス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | X | 3 | 8 | 1 |
前日に続きロースコアな展開となりました、1歩リードしているブレーブスがなんとか1点を守り抜いてワールドシリーズ制覇にリーチをかけました。
アストロズ先発投手:ザック・グレインキー
ブレーブス先発投手:ディラン・リー
アストロズはこのポストシーズンこれまで2.1回しか投げていなかった大ベテランのグレインキーを起用。
ちなみにグレインキーは8番投手として起用されており、ワールドシリーズで先発投手が9番以外の打順に入るのは1918年のベーブ・ルース以来の出来事でした。
それに対してブレーブスはブルペンデーとなり、27歳の新人リーを先発投手としました。
リーは今季メジャーデビューを果たし2試合で防御率9.00。
NLCSで1試合、ワールドシリーズでも1試合リリーフ登板していましたが、ブルペンデーの先陣を任されました。
案の定経験の乏しい新人リーは大荒れで、初回にいきなり1アウト満塁のピンチを招くと、ブレーブスはカイル・ライトへの継投を決断します。
内野ゴロの間に1点を失い、その後もライトは好投するものの4回にホゼ・アルトゥーベからポストシーズン通算23号(単独歴代2位)となるソロ本塁打を浴びます。
一方でアストロズ先発のグレインキーは4回を無失点と最高の投球をみせるも、5回からは継投に入りました。
細かい継投で逃げ切りをはかりたいアストロズでしたがこれが裏目にでて、3番手のブルックス・レイリーがピンチを作り、火消しを任された4番手のフィル・マトンが抑えきれずに2-1の1点差とされます。
さらに7回にはこのポストシーズンまだ本塁打の出ていなかったダンスビー・スワンソンがソロ本塁打でブレーブスが同点に追いつくと、続くソレアが勝ち越しのソロ本塁打でブレーブスは逆転に成功しました。
その1点のリードを守り切ったブレーブスが、3-2で勝利しシリーズ制覇へ王手をかけました。
ブレーブスはブルペンデーでしたがライトの意外な好投とリリーフ陣の盤石さにより接戦を制することができました。
一方のアストロズは継投策が裏目に出て今シリーズ初の逆転負けを喫してしまいました。
第5戦 トゥルーイストパーク
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
アストロズ | 0 | 2 | 2 | 0 | 3 | 0 | 1 | 1 | 0 | 9 | 12 | 0 |
ブレーブス | 4 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 | 8 | 1 |
本拠地のファンの前でワールドシリーズチャンピオンの栄光に輝きたいブレーブスでしたが、アストロズが意地の逆転勝利でなんとか2勝目を挙げました。
アストロズ先発投手:フランバー・バルデス
ブレーブス先発投手:タッカー・デビッドソン
アストロズは第1戦と同じくバルデスを先発させましたが、ブレーブスはモートンを怪我で失ったために25歳の左腕デビッドソンを起用。
彼も昨季デビューしたばかりの新人投手で、レギュラシーズンでは今季4試合に登板しただけ。
ポストシーズン初登板がワールドシリーズの優勝決定戦という最高の大舞台になりました。
ブレーブスは初回にアダム・デュバルの満塁本塁打で4点を先制しましたが、アストロズが2回、3回にそれぞれ2点ずつを返して同点に追いつきます。
3回裏にはフレディ・フリーマンの待望の一発でブレーブスが1点をリードしますが、5回にアストロズはマーウィン・ゴンザレスのシングルヒットで逆転に成功。
7回、8回にもそれぞれ追加点をあげたアストロズは9-5でブレーブスを下しました。
ブレーブスは先に3勝をあげていることで、フリードを無理にスライド登板させることはせずに新人のデビッドソンを登板させましたが、結局それが原因で本拠地優勝のチャンスを逃しました。
アストロズとしては本拠地で逆転優勝の目が出てきた形です。
第6戦 ミニッツメイドパーク
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ブレーブス | 0 | 0 | 3 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 7 | 7 | 1 |
アストロズ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 0 |
ブレーブスがこのシリーズ2度目の完封勝利で26年ぶり4度目となるワールドシリーズ制覇を達成しました。
ブレーブス先発投手:マックス・フリード
アストロズ先発投手:ルイス・ガルシア
ブレーブスは第2戦先発のフリードに、アストロズは第3戦先発のガルシアにそれぞれ託しました。
ともに前回登板では負け投手になっていました。
前回負け投手にはなったものの、3.2回1失点とそれほど悪くない投球だったガルシアでしたが、この試合では3回に好調のソレアに3ラン本塁打を許してしまいます。
ブレーブスは5回にスワンソン、7回にフリーマンがそれぞれ今シリーズ2本目となる一発を放ち、さらに追加点を重ねていきます。
また、先発のフリードはこれぞエースという好投ぶりで、6回を無四球無失点。
フリードは球数には余裕があったものの、マツェック、スミスという盤石のリレーで試合を締め、ブレーブスがワールドシリーズ制覇を成し遂げました。
ワールドシリーズMVPはホルヘ・ソレア
試合 | 打率 | 本塁打 | 打点 | 出塁率 | OPS |
---|---|---|---|---|---|
6 | .300 | 3 | 6 | .391 | 1.191 |
ワールドシリーズMVPはホルヘ・ソレアが獲得しました。
第1戦の先頭打者本塁打に始まり、6試合中5試合でヒットを放ち、シリーズ最多となる3本塁打の見事な活躍ぶりでした。
ソレアはワールドシリーズ前は打率.154の不振でしたが、ワールドシリーズに入ってからは別人のように打ちまくりました。
シリーズ男と呼ぶにふさわしいでしょう。
ブレーブスの凄さ
ブレーブスは今ポストシーズンに出場したチームの中では最低の勝率.547でしかありません。
それが勝率.586のブルワーズ、勝率.654のドジャース、そして勝率.586のアストロズを打倒してワールドチャンピオンに輝きました。
一時期は地区4位にまで落ち込んだこともあったブレーブスが今季終盤に右肩上がりで地区優勝まで駆け上ることができた要因は、チームの判断力にあると思います。
チーム最高の選手であったロナルド・アクーニャJr.を今季絶望の負傷離脱で失いましたが、チーム状況もよくない中で主力を失い諦めかけてもおかしくない状態で、トレードデッドラインで外野手4人を補強しました。
そこで獲得したソレアはワールドシリーズMVP、デュバルは打点王、エディ・ロサリオはNLCSMVP、ジョク・ピダーソンはNLDSでMVP級の活躍をみせ、全員が要所でチームに貢献しています。
今回のワールドシリーズ制覇は、この補強によって成し遂げられたと言っても過言ではないでしょう。
シーズン途中の補強、ポストシーズンでの先発三本柱の起用、フリードをしっかりと休ませて6戦目に登板させたことなど、ブレーブスの判断力が光った1年になったように思います。
また、その判断力が第3戦、第4戦の接戦を制したことにつながっているのではないでしょうか。
加えて、ポストシーズンにおいてはレギュラーシーズンの成績に関係なくヒーローが現れたのも今季のブレーブスの強さだったかもしれません。
上述の補強組がそれぞれのシリーズでMVP級の活躍をみせ、レギュラーシーズンでは7敗を喫するなど安定感にかけていた守護神のスミスがポストシーズンでは11試合無失点の完璧な投球をみせるなど、主力の調子が上がらなくても日替わりヒーローがカバーする強さがありました。
また、今季のブレーブスの最大の魅力は本塁打であり、ワールドシリーズでは6試合で11本塁打とその特長を遺憾なく発揮したのに対して、アストロズはアルトゥーベの2本塁打のみに終わりました。
打撃が最大の魅力のアストロズを封じ込め、自分たちの特色はしっかりと出したブレーブスが勝利するのは必然だったかもしれませんね。
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