パドレスのエース、ダルビッシュ有がMLB通算100勝を達成しました。
今回の記事では、MLB移籍後のダルビッシュのキャリアを振り返っていきたいと思います。
MLB移籍
まずはMLB移籍までの経緯をさらっと紹介しておきます。
東北高校時代、その甘いルックスと飛びぬけたポテンシャルの高さから大きく注目を集め、2年春から4季連続で甲子園に出場。
東北悲願の優勝とまではいかなかったものの、2年夏は準優勝、3年春にはノーヒットノーランを達成。
甲子園通算成績は12試合で7勝2敗、防御率1.47。
大注目の2004年ドラフト会議では日本ハムが1位指名し、背番号は11に決定。
1年目の2005年6月に早速一軍デビューし、完封勝利も記録。
2006年に初の二桁勝利をあげると、2007年には初の開幕投手。
2007-2011年にかけて5年連続防御率1点台を記録し、この間に最多奪三振3回、最優秀防御率2回、沢村賞1回、MVPを2回獲得。
2011年オフにポスティング申請を行い、レンジャーズが5170万3411ドルで交渉権を落札。
当時は現在のポスティングと異なり金額の上限もなく、落札した一球団だけが交渉権を獲得できるというシステムでした。
これ以降入札額に上限ができたため、2023年現在もこのダルビッシュの落札額が史上最高額です。
落札額とは別にダルビッシュ自身がレンジャーズと交わした契約は6年5600万ドル+出来高400万ドルの総額6000万ドルでした。
レンジャーズ時代
2012年(メジャー1年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
29 | 16-9 | 3.90 | 191.1 | 221 | 89 | 14 | 1.28 | 10.40 | 4.19 | 2.48 |
新人王投票3位
オールスター
4月の月間最優秀新人
4/9に25歳でメジャーデビュー。
デビュー戦は5.2回5失点と好投とは言えなかったものの打線の援護がありメジャー初勝利。
3登板目の4/19には6.1回1失点と初めてのQSを記録。
4登板目の4/24には黒田と投げ合い8.1回無失点10Kとメジャーで初めての無失点と二桁三振を記録。
4月を負けなしの4勝、防御率2.18の好成績で終えたことで月間最優秀新人を受賞。
前半戦だけで10勝、防御率3.59を記録したことで最終投票でオールスターに選出。
後半戦に入り一時期制球が大きく悪化した時期があったものの終盤には安定し、8試合連続QSを記録。
チームはワイルドカードでポストシーズンに進出し、ワイルドカードゲームの先発を任されたダルビッシュは6.2回3失点(自責2)と好投したもののチームは敗れ敗戦投手に。
この年はトラウトのルーキーイヤーであり、満票でトラウトが新人王に選出されたものの、ダルビッシュは2位セスペデスに次ぐ3位にランクイン。
また、新人ながらサイ・ヤング賞投票にも名前が出る活躍だった。
2013年(メジャー2年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
32 | 13-9 | 2.83 | 209.2 | 277 | 80 | 26 | 1.07 | 11.89 | 3.43 | 3.46 |
MVP投票22位
奪三振王
オールスター
前年の活躍から開幕2試合目アストロズ戦の先発を任され、あわや完全試合という投球を披露。
8.2回を14Kの完全投球を見せていたものの、残り1アウトというところでマーウィン・ゴンザレス(現オリックス)に安打を打たれ大記録を逃しそのまま降板。
前年よりスライダーの割合を増やして奪三振力のあがったこの年は、両リーグ最速で100Kに到達するなどMLB最高の奪三振マシンと化し、前半戦終了時には防御率3.02、両リーグトップの157Kを記録してオールスターに選出。
後半戦はさらに成績を向上させ、終わってみれば野茂に次ぐ日本人史上2人目の奪三振のタイトルを獲得。
この年に記録したK/9 11.89は当時歴代9位(現在は歴代30位)となり、今も日本人投手としては歴代最高の数値。
2014年(メジャー3年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
22 | 10-7 | 3.06 | 144.1 | 182 | 49 | 13 | 1.26 | 11.35 | 3.06 | 3.71 |
開幕をDL入りで迎えるも、初登板となった4/6には7回無失点、2登板目は8回1安打無失点と順調な滑り出しをみせる。
5/9には7回2アウトまで完全試合もオルティスにエラーでの出塁を許し、その後は9回2アウトまでノーヒッターを継続するも、あと1アウトというところでオルティスに安打を許し降板したことでノーヒッターと初完封を逃す。(後にMLBがオルティスのエラー出塁を安打と訂正したことで、公式には被安打2と変更された)
その後も好投を続けたダルビッシュは6/11にメジャー初完封を記録するなどサイ・ヤング賞級パフォーマンスを披露しており再びオールスターにも選出されたものの、8月に右肘の炎症でDL入りすると結局そのままマウンドに戻ることなくシーズンを終了。
渡米から3年連続の二桁勝利は記録したものの、3年連続規定投球回到達はならなかった。
2015年(メジャー4年目)
スプリングトレーニングの初登板で右腕の張りを訴えて降板すると、翌日に右肘の靭帯損傷が判明。
トミー・ジョン手術を受けたことでシーズン全休となった。
2016年(メジャー5年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
17 | 7-5 | 3.41 | 100.1 | 132 | 31 | 12 | 1.12 | 11.84 | 2.78 | 4.26 |
1年以上のリハビリを乗り越え、5/28にメジャー復帰。
復帰登板は5回1失点で勝ち投手に。
復帰一年目にも関わらず手術前とそん色ない投球パフォーマンスを披露した上、4シームの球速は手術前93.0mphから94.4mphへと1mph以上上昇。
また、8/24にはプロ入りしてから初めてのHRを記録。
2017年(メジャー6年目) レンジャーズ時代
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
22 | 6-9 | 4.01 | 137.0 | 148 | 45 | 20 | 1.17 | 9.72 | 2.96 | 3.29 |
開幕から先発ローテーションを守りエース格として稼働し、2014年以来のオールスターにも選出。
しかし契約最終年であったこととチーム状況から7/31にトレードでドジャースへと移籍。
ちなみにこの年レンジャーズでは防御率4.01だが、これはトレード直前の最終登板で3.2回10失点というキャリアワーストの大炎上をしたことで悪化したもので、それ以前までは防御率3.44だった。
ドジャース時代
2017年(メジャー6年目) ドジャース時代
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
9 | 4-3 | 3.44 | 49.2 | 61 | 13 | 7 | 1.15 | 11.05 | 2.36 | 4.69 |
ダルビッシュにとってはキャリア初のトレード移籍だったものの、ドジャースでの初登板となった8/4にいきなり7回無失点10Kの好投を見せ、その後も2度5失点した試合があった以外はトレードできた助っ人らしい活躍でチームの地区優勝に貢献。
ポストシーズンへ進んだチームのローテの柱としてNLDSでは5回1失点、NLCSでは6.1回1失点とそれぞれ勝利に貢献。
しかし、アストロズとのWSでは1.2回4失点、1.2回5失点(自責4)とそれぞれ早い回で大量失点し降板。
チームもシリーズに敗れ、初のチャンピオンリング獲得はならなかった。
2017年(メジャー6年目) レンジャーズ&ドジャース
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
31 | 10-12 | 3.86 | 186.2 | 209 | 58 | 27 | 1.16 | 10.08 | 2.80 | 3.60 |
オフにFAとなったダルビッシュは6年1億2600万ドルでカブスと契約。
カブス時代
2018年(メジャー7年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
8 | 1-3 | 4.95 | 40.0 | 49 | 21 | 7 | 1.43 | 11.03 | 4.73 | 2.33 |
1億ドル超えの大型契約で大きな期待とともにシカゴにやってきたものの、カブスデビュー戦は4.1回5失点と苦しい立ち上がり。
その後も制球難などで状態を上げられず、5/20にようやく初勝利をあげた後に右腕を故障。
復帰を目指していたもののマイナーでのリハビリ登板中に右肘の異変を訴えて降板し、靭帯損傷はなかったものの新たな故障が見つかりシーズン全休に。
2019年(メジャー8年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
31 | 6-8 | 3.98 | 178.2 | 229 | 56 | 33 | 1.10 | 11.54 | 2.82 | 4.09 |
シーズン前半を防御率5.01という成績で折り返したものの、後半戦は防御率2.76と劇的に改善。
前半戦97.0回で49個も出していた四球数が、後半戦は81.2回でわずか7個と別人のように数字が向上。
勝ち星こそ伸びなかったものの、最終的には防御率を3点台にまで持ち直した。
この年から投球スタイルが変わり、それまで30%以上の割合で投じていた4シームを減らし、スライダー系の変化球主体となった。
2020年(メジャー9年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
12 | 8-3 | 2.01 | 76.0 | 93 | 14 | 5 | 0.96 | 11.01 | 1.66 | 6.64 |
MVP投票14位
オールMLB1stチーム
最多勝
8月の月間最優秀投手
コロナ禍による60試合の短縮シーズンながら、キャリア最高のシーズンを過ごす。
前年後半の勢いそのままに、12登板中8試合で1失点以内に抑えるなど終始支配的な投球。
最多勝、防御率2位、奪三振4位でサイ・ヤング賞の有力候補の一人となったものの、トレバー・バウアー(現DeNA)に敗れ投票2位に。
この活躍により2019年から新設されたオールMLB1stチームに日本人として初めて選出された。
ちなみに成績だけでなく投げているボールもキャリアハイで、トミー・ジョン手術以降は94mph台だった速球がこの年は平均95.6mphと大幅上昇。
それだけの速球を持ちながらもあくまで投球の主体はスライダー系の変化球というのが恐ろしいところ。
このダルビッシュの活躍を売り時と考えたカブスは、チーム事情もありオフにトレードオファーに応じ、ダルビッシュはパドレスへと移籍。
パドレス時代
2021年(メジャー10年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
30 | 8-11 | 4.22 | 166.1 | 199 | 44 | 28 | 1.09 | 10.77 | 2.38 | 4.52 |
この年のパドレスはダルビッシュだけでなくスネル、マスグローブら好投手を相次いでトレードで獲得しており、開幕前はドジャースとともにWS制覇の有力候補と目されていた。
前年サイ・ヤング賞2位だったダルビッシュはそのチームのエースとして大きな期待を背負いながらもそれに応える前半戦防御率3.09というパフォーマンスを披露。
6/21にはMLB史上最速で通算1500奪三振を達成し、オールスターにも選出。
しかしオールスター前後でやや調子を落としており、8/12の登板で腰の故障のため降板しIL入り。
勝率を落とすチームと同じくダルビッシュも調子を落とし、後半戦は防御率6.16と大きくパフォーマンスを悪化させてシーズンを終えた。
2022年(メジャー11年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
30 | 16-8 | 3.10 | 194.2 | 197 | 37 | 22 | 0.95 | 9.11 | 1.71 | 5.32 |
9月の月間最優秀投手
初登板の4/7に6回ノーヒッターの好投を見せるも、2登板のジャイアンツ戦で1.2回9失点の大炎上。
しかしこの炎上以降シーズン最後までずっとエースらしい投球を続け、QS数は両リーグトップの25回と抜群の安定感を発揮して2012年に並ぶキャリアハイタイの16勝をあげた。
名実ともにエースとして挑んだポストシーズンは、ワイルドカードシリーズでメッツ相手に7回1失点で勝利、NLDSでも5回3失点で勝利とチームのNLCS進出に大きく貢献。
2017年以来となったNLCSでは2試合に登板し7回2失点、6回2失点とそれぞれ好投したもののチームは勝利できなかった。
2023年(メジャー12年目)
試合 | 勝敗 | 防御率 | 投球回 | 三振 | 四球 | 被HR | WHIP | K/9 | BB/9 | K/BB |
12 | 5-4 | 4.30 | 69.0 | 74 | 22 | 8 | 1.16 | 9.65 | 2.87 | 3.36 |
開幕前に6年1億800万ドルで契約延長。
36歳がこれほど長期の延長契約をするのは異例で、実質的なパドレスとの生涯契約となった。
この契約についての詳細はこちら → ダルビッシュ6年の契約延長の是非
契約延長したばかりながらWBC出場のオファーを受けメジャーリーガーとなって以降初めての国際大会に出場。
チームから日本代表への早期合流を許可され、大会では実戦での調整不足により打たれる場面があったもののチームの精神的支柱として優勝に貢献。
自身が優勝投手となった2009年WBCに続き出場2大会連続の優勝となった。
WBCに心血を注いだことでレギュラーシーズンに向けての調整が遅れたものの4/4に初登板。
6/9のロッキーズ戦で5.1回4失点ながら勝ち投手となり、日本人史上2人目となるMLB通算100勝を達成。
投球スタイルの変遷
TJ手術以前(2012-2014)
2012年の投球割合
球種 | 割合 | 平均球速 |
4シーム | 30.4% | 93.3mph |
スライダー | 19.7% | 81.9mph |
2シーム | 18.2% | 93.3mph |
カッター | 17.7% | 90.3mph |
カーブ | 8.7% | 70.2mph |
スプリッター | 5.3% | 87.7mph |
メジャーデビューした2012年は93.3mphの4シームを軸に、スライダー、2シーム、カッター、カーブ、スプリッターを投げ分けるスタイルだった。
2013年はスライダーの割合が37.2%を占めるほど多投していたものの、2014年にはまた4シーム主体に。
TJ手術以降(2016-2018)
2016年の投球割合
球種 | 割合 | 平均球速 |
4シーム | 41.9% | 94.4mph |
スライダー | 19.7% | 82.2mph |
2シーム | 17.3% | 92.9mph |
カッター | 9.8% | 89.3mph |
カーブ | 9.1% | 73.0mph |
スプリッター | 2.3% | 86.7mph |
トミー・ジョン手術から復帰した2016年には4シームの平均球速が94.4mphまで上昇。
これ以降4シームは常に平均94mph以上を維持。
スライダー主体期(2019-)
2022年の投球割合
球種 | 割合 | 平均球速 |
スライダー | 31.5% | 86.0mph |
4シーム | 25.5% | 95.0mph |
スイーパー | 15.4% | 82.7mph |
2シーム | 8.5% | 94.7mph |
スプリッター | 7.4% | 89.2mph |
カーブ | 7.3% | 76.1mph |
カッター | 4.3% | 90.7mph |
2019年より現在に近いスライダー系主体の投球スタイルに。
4シームが20%前後になり、スライダー系(スライダー、スイーパー、カッター)が50%前後を占めるようになっている。