昨季トレードでツインズに移籍し、いきなりエース級の働きでサイ・ヤング賞投票2位と大活躍を見せた前田健太。
今季はエースとしてチームを地区優勝に導く役割を担っていましたが、4/21のアスレチックス戦で大炎上すると、そこからなかなか調子が上がらず防御率5点台のまま5月にIL入り。
6月に復帰したもののピリッとしない投球が続いていました。
今季最高の内容で4勝目
前回登板で同地区の首位ホワイトソックスに5回途中7失点を許し3敗目を喫した前田でしたが、この日のロイヤルズ戦では一味違いました。
6.0回 2安打 10奪三振 1四球 無失点
4/7のタイガース戦以来のQSとなり、10奪三振も今季最多でした。
昨季との違い
制球・被本塁打の悪化
今季の前田が昨季と大きく異なるのは、制球と被本塁打です。
四球率 2020年 1.35 → 2021年 3.02
被本塁打率 2020年 1.22 → 2021年 1.58
四球率は一流投手のそれから平凡なレベルに悪化。球威のあるタイプの投手ならばこの四球率も問題にはなりませんが、前田のような投手では死活問題です。
そして被本塁打率は元々よくなかったのがさらに悪化。
今季は1試合に1本に近いペースで打たれています。
同地区相手しか抑えられない?
上述のように昨季サイ・ヤング賞2位と大活躍だったわけですが、実はこれは同地区との対戦が多かったおかげだという見方があります。
昨季はコロナウイルス蔓延の影響で、短縮シーズンになったことに加え、移動を制限するために同地区との対戦のみが行われました。
具体的には、同リーグ同地区内で40試合、他リーグ同地区内で20試合が行われたわけです。
前田の所属するツインズはア・リーグ中地区のチームですが、中地区は両リーグともに最もレベルが低い傾向にあります。
例えば昨季のア・リーグのチーム得点ランキングに目を向けてみます。
1位 ヤンキース
2位 ホワイトソックス
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10位 ツインズ
11位 マリナーズ
12位 タイガース
13位 インディアンス
13位 ロイヤルズ
15位 レンジャース
このように、ホワイトソックスを除けば他の4チームは下位に沈んでいます。
ナ・リーグはもっと悲惨な状況で、得点ランキング下位6チームのうち5チームが中地区という有様でした。
こういった状況を考慮すれば、昨季のサイ・ヤング賞投票で両リーグ上位2名がそれぞれ中地区の投手だったのは当然の結果だったのかもしれません。
前田もその恩恵を受けた投手だったわけですが、昨季投手三冠で満票のサイ・ヤング賞受賞となったインディアンスのシェーン・ビーバーも、防御率、四球率、被本塁打率が軒並み悪化しています。
前田が今季QSを記録したのは2試合で、その相手もタイガースとロイヤルズと中地区のチームです。タイガースは今季得点数ランキング13位、ロイヤルズは14位ですから、打線の弱いチームを順当に料理したわけです。
そうなってくると、今日のロイヤルズ戦での好投で、昨季の彼が戻ってきたと考えるのは早計かもしれません。
スライダーのパフォーマンス低下
前田にとって今季はMLB移籍後ワーストと言っていい出来ですが、球種や投球割合は昨季とそれほど変わっていません。
ただし、スライダーのパフォーマンスが低下しているのは見過ごせない点です。
これまで彼のスライダーはどの年も平均以上の球種であり続けました。
特に2019年はスライダーの被打率.155とリーグ最高クラスのウイニングショットとなっていました。
それが今季は被打率.255にまで悪化。
その最大の要因だと考えられるのは空振り率の低下で、良かった時期よりも10%程度も空振りが減っています。
さらにスライダーで四球を出す割合が非常に高く、最も頼りにしているこの球種をコントロールしきれていないようにみえます。
復調したかはまだ様子見
今季一番の好投をみせたとはいえ、相手はロイヤルズ打線。
上述のスライダーのパフォーマンスの問題もあり、まだまだ改善されるかはわかりません。
打線の強いチームを抑えることができれば希望の光が見えてくるとは思いますが、これから少し様子見というところでしょう。