MLBスタープロファイルvol.5は、2021年シーズンのナ・リーグMVPを獲得した ブライス・ハーパーです。
ブライス・ハーパー
Embed from Getty Images経歴
メジャーデビュー
アマチュア時代から並のメジャーリーガーより大きな注目を集めており、2009年には16歳にしてスポーツ・イラストレイテッドの表紙を飾るなど、同じく高校時代からずば抜けた注目度を誇っていたNBAのレブロン・ジェームズになぞらえて”Chosen One”(選ばれし者)と呼ばれていました。
本来ならば2011年のMLBドラフトで全体1位指名というのが既定路線でしたが、敏腕代理人であるスコット・ボラスのアドバイスのもと、短大への飛び級という裏技で一年早い2010年MLBドラフトにエントリーし、1巡目全体1位指名でナショナルズと契約を結びました。
度々ビッグマウスを見せており、本人も10代でのメジャーデビューを求めていた中、実際にマイナーで十分な活躍を見せて2012年の4月28日に19歳でのデビューを果たしました。
この年は、史上最年少でオールスターに選出に加え、史上2人目の10代での20本塁打到達を記録するなど、こちらも史上最年少となる19歳でのナ・リーグ新人王に輝きました。
初のMVP
噂に違わぬデビューイヤーの活躍ぶりから、一気にスターダムを駆け上がるのではないかと思われたハーパーでしたが、故障などもあり2013年と2014年はやや物足りない成績に終始。
しかし、2015年に一気に大ブレイクを果たし、打率.330(リーグ2位)、42本塁打(同1位)、99打点(同5位)、OPS1.109(同1位)というずば抜けた成績を残し、満票でナ・リーグMVPに輝きました。
史上3番目の若さ、満票受賞に至っては史上最年少という快挙でした。
フィリーズへの移籍
22歳にしてMVPを獲得する怪物ぶりから、ここからも毎年MVP級の活躍を見せてくれるかと思いきや、警戒度が大きく上がった影響か、2016年はキャリアワーストとなる打率.243に終わります。
再びトップクラスに返り咲きたい2017年は打率.319、OPS1.008という素晴らしい数字を出したものの、故障による離脱期間が長く規定打席到達はなりませんでした。
FAイヤーとなる2018年には、前半戦に23本塁打を記録しホームランダービーに選出され、見事優勝。
自身初の100打点に加え、キャリア二度目となる30本塁打超えを記録したものの、打率はまたしても低下してしまいました。
2018年オフにFAとなると、フィリーズと13年3億3000万ドルで契約。
ナショナルズ時代の背番号34はフィリーズのレジェンドであるロイ・ハラデイと同じになるため、新たに背番号3をつけることになりました。
2度目のMVP
超巨額契約でフィリーズへ移籍した初年度は、2年連続の30本塁打100打点を達成したものの、その契約に見合うものは言えず、ファンの間では過大評価されているという声もありました。
2020年は短縮シーズンながらOPS.962の好成績を残し、状態を上げて臨んだ2021年は、オールスターにこそ選出されなかったものの、夏場から大きく調子を上げ、最終的にリーグ1位となるOPS1.044を記録。
全ての打撃スタッツが高水準であり、この活躍から自身2度目のMVPを獲得しました。
複数回受賞は史上32人目であり、異なる2球団でのMVPは史上7人目の快挙でした。
獲得タイトル・記録
MVP 2回(2015, 2021)
新人王 (2012)
シルバースラッガー 2回(2015, 2021)
オールスター 6回(2012-13, 2015-18)
本塁打王 1回(2015)
通算成績
プレースタイル
打撃
10代でメジャーデビューを果たし、いきなり史上2人目の10代20本塁打を達成するなど、長打力が魅力の打者です。
2015年には42本塁打を放ち本塁打王に輝くなど、早い段階で打撃力が開花。
しかし、ルーキーイヤーや2015年の衝撃度の割に年ごとに打撃成績が上下するなどやや安定感に欠け、OPS.900以上を達成したのは4年のみ。
近年は安定して30本塁打超えを達成している反面、打率はいい年と悪い年の差が極端になっています。
それでも2015年以降は警戒度が上がったこともあって毎年100四球前後をコンスタントに稼ぐようになっており、4割近い通算出塁率を記録するなど、実はその出塁能力の安定感こそが最大の魅力です。
走塁
走塁自体は非常に積極的で、ルーキーイヤーには10代の選手として48年ぶりとなるホームスチールを決めるなど、アグレッシブな走塁が魅力的。
とはいえ、飛び抜けた走力があるわけではないため、これまでのキャリアハイは2016年の21盗塁であり、この年も10盗塁死するなど盗塁もうまいわけではありませんでした。
しかし、2018年からの直近4年間に限れば49盗塁11盗塁死を記録しており、盗塁成功率8割超えと盗塁技術に向上がみられます。
若い頃に積極的な盗塁を繰り返していた選手でも、同年代のマイク・トラウトのように20代後半から30代にかけて盗塁機会が極端に減っていくことが多いのに対して、ハーパーは30代に近づいても盗塁・走塁への積極性が落ちておらず、2021年シーズンには全力疾走でランニングホームランも達成しています。
守備
アマチュア時代には捕手を務めていましたが、プロ入り後は外野手に専念。
ライト、レフト、センターの全ポジションを守った経験があるものの、近年は主にライトを守っています。
デビューイヤーにセンターでDRS+13という高数値を叩き出したものの、それ以降は良かったり悪かったりの平均的な守備力と言えます。
元々捕手だっただけあって肩は強いのですが、メジャーにおいて特別強肩というほどでもありません。
ゴールドグラブ賞の受賞経験はなく、今後も難しいと思われます。
契約
2018年オフにナショナルズからFAとなり、FA史上最高額となる13年3億3000万ドルでフィリーズと契約しました。
この総額は未だに超える選手がおらず、2021年オフのロックアウト直前にFAのコーリー・シーガーが10年3億2500万ドルの契約をレンジャーズと結んだものの、ハーパー超えはなりませんでした。
しかし、まだ契約先が決まっていないカルロス・コレアがもしかするとこれ以上の契約を結ぶことになるかもしれません。
ちなみにFAを除く史上最高額は、マイク・トラウトがエンジェルスと結んだ12年4億2650万ドルです。
今後の展望
2021年は2度目のMVPを獲得したばかりのハーパーですが、前回圧倒的な成績でMVPを獲得した2015年の翌2016年は打率.243 OPS.814と成績が急降下しました。
近年は毎年一定水準の成績には到達してくる印象ですが、2022年シーズンも2021年に匹敵する数字を出せるのか、ということが彼を評価する上での重要なファクターになりそうです。
過去に打率3割超えを記録した2年は、ともにその翌年打率.240台にまで低下しているため、今回も.260程度にまで悪化しそうな予感があります。
それでも、近年の長打、出塁面での安定感を考えると、今後も30本塁打 出塁率4割前後の数字は残し続けそうです。
本来彼に求められていたのは50本塁打クラスの怪物的活躍であったため、30本塁打程度ではやや期待はずれではあるのですが…