この夏のトレードデッドラインで的確な補強をした球団トップ5

トレードデッドライン MLB
MLB.comより引用

この夏のトレードデッドラインが終了しました。
毎年恒例ではありますが、今年も各チームの主力選手やプロスペクトが大きく動き、8月からの戦力図に大きな変化を与えそうです。
実際にそのトレードが功を奏するか否かはシーズンが終了するまではわかりません。
しかし、しっかりと必要な部分を補うためのトレードであったかどうかは現時点でもわかります。
そこで今回は、トレードデッドラインでの補強が的確だった”買い手”球団トップ5と、番外編として精力的に動いたのにうまくいかなかった球団を紹介したいと思います。

1位 ドジャース

特に怪我に悩まされてきた今季のドジャース。
特に補強ポイントとされていたのが怪我人や不祥事のあった先発投手陣で、この問題をマックス・シャーザーダニー・ダフィーの獲得でクリアしました。
特にシャーザーに関しては直前まで同地区のパドレスが優位に進めていたところから数時間でひっくり返して奪い取ったわけですから、ただ獲得した以上の価値があります。
これによってパドレスは今回先発投手の補強に失敗したため、戦力的にも非常に大きな一撃になりました。

さらにここに加えたのがシャーザーと同時に獲得したトレイ・ターナー。
正遊撃手であるコリー・シーガーが故障離脱している現状を埋めることができ、なおかつ復帰後はユーティリティ的に使うことができます。
巨大戦力がさらに巨大に膨れ上がり、ジャイアンツを抜き去る準備ができました。

2位 ブルージェイズ

ブルージェイズは既にリーグ最高級の打線を擁しているため、そちらに手を加える必要はありませんでした。
それなのに地区4位と勝てない理由は、やはり投手力。
主軸となる先発投手がロビー・レイ、リュ・ヒョンジンと左に偏っており、3本目の柱として右投手が欲しいところでした。
そこでツインズから獲得したのがホセ・ベリオス
今季倒壊気味のツインズの中でも安定して好投していたベリオスが加われば、プレーオフでも十分戦える先発ローテーションになります。
一方で、そもそも地区4位のチームがプロスペクトを放出してまで買い手に回る必要があったのか?という疑問も湧いてきます。
しかしベリオス獲得はそれに対しても的確な答えを持っていて、彼がFAになるのは来オフ。
つまり今季プレーオフを逃したとしても来季も彼をローテーションの軸として考えられるということです。

また、ベリオスほどではありませんが、不安定なリリーフにも的確な補強をしました。
ナショナルズでクローザーを務めていたブラッド・ハンドと、ダイヤモンドバックスからホアキン・ソリアを獲得し、リリーフを強化しています。

3位 ホワイトソックス

ホワイトソックスはほとんど補強する必要がないくらいの戦力を既に擁しています。
リーグ屈指の得点力に充実した先発ローテーション、さらに絶対的クローザー。
現状でも地区優勝は間違いないくらいですが、プレーオフを戦い抜く上でリリーフの厚みには不安がありました。
そこでホワイトソックスが獲得したのがクレイグ・キンブレルとライアン・テペラ。
キンブレルはどこへ行ってもリリーフエースをはれる今季最高の守護神であり、テペラは地味ながら好投しているベテランセットアッパーです。
この2投手を獲得しただけで、ホワイトソックス投手陣はほとんど完璧に近いものになりました。
的確な補強とはまさにこのことです。

打線において今季想定外だったのが、二塁手として見込んでいたニック・マドリガルが今季絶望の怪我をしてしまったこと。
その穴を埋めるための候補にはエデュアルド・エスコバーの名前があがっていたのですが彼はブルワーズへ移籍しました。
そこで最終的に獲得したのがシーザー・ヘルナンデス。
彼は同地区インディアンスからのトレードです。
強打者というよりは、巧打者というタイプだったのですが、今季は既にキャリアハイの18本塁打を放っており、得点力は高くとも本塁打はリーグ14位だったホワイトソックスにとってはこちらも的確な補強となりました。
ちなみに上述のマドリガルは、なんとキンブレル獲得の際のトレードでカブスへと移籍しました。
今季絶望の選手を使って必要なピースを揃えるというウルトラCでした。

4位 ヤンキース

地区3位と首位争いから置いて行かれているヤンキースですが、当然のように買い手にまわりました。
得点数リーグ12位という貧弱な打線を強化するために獲得したのは、ジョーイ・ギャロアンソニー・リゾーの二人の左打者です。
実は今季のヤンキース打線は、ガードナーとオドアー以外全員が右打者という偏ったものになっていました。
しかもルーク・ボイトが一塁を守るときは左打者はガードナーだけになります。
ヤンキースタジムは左打者有利の球場であり、今季のヤンキース打線はその特性を全く活かせていませんでした。
しかし上記二人の左打者を新たに獲得したことにより、この問題を大きく改善することができます。
両選手ともにヤンキースタジアムで成績が向上する可能性が高く、得点力アップが期待できそうです。

ヤンキースはさらに先発ローテーションの穴埋めにアンドリュー・ヒーニーと、リリーフでクレイ・ホームズを獲得しました。
これは戦力的な増強と言うよりは、故障者が戻ってくるまで耐え忍ぶための1ピースという感じです。
少なくとも今回ヤンキースは投手陣は大きな補強ができませんでした。
プロスペクトの枯渇を避けるために流石にそこまでは手が回らなかったという印象です。

5位 アストロズ

大型トレードを仕組んだわけでもなく、終始地味なイメージがあったアストロズでしたが、非常に一貫性のある補強を繰り返しました。
獲得したのはケンドール・グレイブマン、ラファエル・モンテロ、イミ・ガルシア、フィル・マトンと全員リリーフ投手。
それもそのはず、アストロズは今季得点力でリーグ1位の打線を擁しており、先発投手陣もリーグ2位の防御率を誇ります。
補強の必要があったのは防御率リーグ9位と平均以下のリリーフだけだったのです。
中でも特に重要だったのがグレイブマンとガルシアの2投手。
両者ともに所属していたチームではクローザーを務めており、グレイブマンに至っては同地区で勢いのあるマリナーズから獲得しました。
アストロズは守護神ライアン・プレスリー以外に頼れるリリーバーを複数得たことで、プレーオフでも弱点のないチームを作り上げました。

番外編 パドレス

オールスター内野手アダム・フレイジャー、優秀なリリーフのダニエル・ハドソン、外野手のジェイク・マリズニックを獲得したパドレス。
一見精力的に補強したように見えますが、パドレスは今回のトレード戦線の敗者と言ってもいいでしょう。
理由は単純で、最大の補強ポイントであった先発投手を一人も獲得できなかったからです。

今季のパドレスは、開幕前はドジャースと並ぶ巨大戦力として高く評価されており、特にオフに度重なるトレードで獲得したダルビッシュ有、ブレイク・スネル、ジョー・マスグローブを加えた先発投手陣はリーグ最高級と考えられていました。
ところがふたを開けてみるとリーグ最高級だったのはあまり期待されていなかったリリーフ陣で、最高と評された先発ローテーションや怪我や不振によってリーグ中位レベルにとどまっています。
そのせいでドジャースとジャイアンツの首位争いから一歩後退しており、プレーオフ進出は可能でも地区優勝はやや難しいところに来ています。

そのため、今回のトレードデッドラインでは必ず先発投手を補強する必要があったわけですが、パドレスが狙っていたのはマックス・シャーザーでした。
シャーザー獲得にはかなり近いところまで行っており、実際にパドレス移籍が濃厚という報道まで出ましたが、その後数時間でよりによって同地区ドジャースにひっくり返されたわけです。
そこからパドレスがとった行動は、シャーザーをとれなかった代わりに、同じナショナルズからリリーフのハドソンを獲得するということでした。
リリーフは既にリーグ最高の防御率を誇るのに、です。

そうなると今度は第二ターゲットであったホセ・ベリオス獲得に全力を注ぐかと思われましたが、こちらもブルージェイズに奪われました。
そしてついぞ先発投手を補強することなく終わったのです。

また、最初に獲得したフレイジャーにも疑問符がつきます。
パドレスには既にオールスター二塁手のクロネンワースがおり、さらに遊撃手タティスJr.、三塁手マチャドも不動のものです。
今季の打力的にはクロネンワースを一塁に回し、フレイジャーを二塁にするのが納得のいく形でした。
そうすると、必要があるかどうかはともかく、内野手が全員オールスター選出メンバーという豪華な陣容になります。
それはすなわち現一塁手のホズマーをはじき出すことになりますが、実際にパドレスもそう考えてホズマー放出を画策していたようです。
しかし、それもうまくいかず結局ホズマーは残すことになりました。

結局のところ、今回のトレードが思い通りにいかなかったのは、パドレスがプロスペクトを出し渋ったからです。
シャーザーを獲得したドジャースも、ベリオスを獲得したブルージェイズも、それぞれチームで1,2を争うトッププロスペクトを放出しました。
それはやはり今季に全てを賭けたい思いがあるからです。
パドレスは現時点でも地区3位、しかもプレラーGMは今後3年でワールドシリーズを狙いに行くと宣言していますから、今季のためにトッププロスペクトを吐き出すような真似はしたくなかったのでしょう。
今季だけをみた場合、今回のパドレスの補強にはファンからの不満が残りますが、来季以降を見据えるならば間違ってもいないかもしれません。

パドレスファンである私としては非常に悔しい結果ですが、今季は先発投手陣が突如立ち直らない限りは、プレーオフに進出するだけで満足するしかないかもしれません。

しかし何より気になるのは今日のタティスJr.の怪我の具合です。
彼の左肩の負傷は癖になっていますし、今季絶望なんてことにならなければいいのですが…

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